本稿では、生活保護世帯の子どもの大学進学をめぐる議論を手がかりに、低所得層の貧困解決責任のあり方について検討した。近年、給付型奨学金や修学支援制度など、低所得層への高等教育支援が拡大され、子どもの貧困に対して社会が積極的に責任を担う傾向が強まっている。しかし、生活保護世帯の子どもには依然として世帯分離措置が維持され、進学を選択することで既存の支援を失うという構造が続いている。国会や社会保障審議会の議論を分析すると、「一般世帯とのバランス」や「就労義務」を根拠に、貧困対処を個人に引き受けさせる局所的フェアネスに基づく認識と、「社会全体が進学を支援するメッセージ」を重視し、責任を社会に拡大しようとする認識が競合している状況が確認できた。その結果、生活保護世帯の子どもに対しては社会的責任が十分に適用されず、自己責任論が温存される現状が明らかになった。