社会政策
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日本における<経済学>系社会政策論と<社会学>系社会政策論 : 戦前期の一断面(<小特集>戦前日本社会政策論の再発見)
玉井 金五杉田 菜穂
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2010 年 2 巻 1 号 p. 69-79

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抄録

1930年代は,日本の社会政策論の大きな転機となった。大河内理論の登場によって,それまで社会政策論の対象であった生活=消費過程が切り離され,社会政策=労働政策へと著しい収斂をみせたのである。いいかえれば,「本来」の社会政策論(=<労働政策+生活政策>)がそれなりの発展を遂げた世紀転換期あたりから1920年代前半までは,日本社会政策論史におけるひとつの画期であった。そうした研究史の系譜のなかで,本論文は戦前期の社会政策論を新たな角度から照射しようとするものである。そこで重要な意味をもったのが,1910年代から1920年代にかけて人口論児童・少年問題保健・医療の領域で論陣を張り始めた社会学をベースとする社会政策論である。それをリードした高田保馬,永井亨をはじめ,生活政策的な社会政策の追究と深く関わった論者の学説は,当時支配的であった<経済学>系社会政策論に対して<社会学>系社会政策論として特徴づけることができる。

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© 2010 社会政策学会
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