近年,柔軟な労働市場と寛大な社会的保護制度を併せ持つデンマークが,フレキシキュリティ・モデルとして注目されている。デンマークのフレキシキュリティ・モデルは,しばしば,柔軟な労働市場,寛大な福祉システム,そして積極的雇用政策から構成されていると指摘される。本稿の主な関心は次の2点である。ひとつは,デンマークのフレキシキュリティ・モデルはどのような歴史的な脈絡のなかで形成されてきたのか,そしてもうひとつは,近年の積極的雇用政策の導入がデンマークの失業者にどのような影響を与えているのか,である。これらの研究課題に答えるために,本稿の構成は以下のようになっている。第1に,デンマークのフレキシキュリティを構成する諸制度を説明する。第2に,失業保険と積極的雇用政策の歴史的背景を明らかにする。最後に,アクティベーション政策が不利な状況に置かれる人々に与えるインパクトについて述べたい。