2011 年 3 巻 2 号 p. 77-86
福武の社会政策論を学説的に整理して紹介し,福武を<社会学>系社会政策論の戦後の担い手として位置づける。戦前期から日本社会政策論を見渡すと,<経済学>と<社会学>系という大きな二つの学問的系譜を見出すことができる。あえていえば,労働問題を中心に扱った<経済学>系に対して,<社会学>系社会政策論者は人口問題,児童・少年問題,保健・医療等といった領域で論陣を張っていた。戦前期は戸田貞三(とだ・ていぞう,1887-1955)をはじめ社会学をベースに論者が活躍したが,<都市>と<農村>の関係,<社会政策>と<社会事業>の連関等いくつかの重要なテーマは,戦後まで持ち越された。そうした課題に対して,戦後正面から取り組んだ人物こそ福武に他ならなかったのである。