社会政策
Online ISSN : 2433-2984
Print ISSN : 1883-1850
ミニマム・インカム・スタンダード(MIS法)を用いた日本の最低生活費試算 : 他の手法による試算および生活保護基準との比較(<小特集2>イギリスのミニマム・インカム・スタンダード(MIS)を用いた日本の最低生活費研究)
岩田 正美岩永 理恵
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 4 巻 1 号 p. 61-70

詳細
抄録

1990年代以降,諸外国で再び,最低生活費算定が注目されはじめた。日本でも最近,新たな最低生活費研究の動きがみられる。この状況下でわれわれは,一般市民の参加と合意を重視した方法=MIS法により最低生活費を試算した。小論では,MIS法による最低生活費と,近年日本で実施された他の手法による最低生活費試算結果,および生活保護基準とを比較した。他の試算結果より,MISは,やや高めである。もちろん金額の違いは,最低生活費算定の手法の差異を反映している。MIS法最大の特徴は,市民のグループ・ディスカッションを通じて,一種の「コモンセンス」を引き出し,最低限度の裁定を市民に任せることにある。われわれのMISの可能性を追求し,「コモンセンス」を探る試みは道半ばである。さらに最低生活の内容やあり方を探る研究の蓄積が求められる。

著者関連情報
© 2012 社会政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top