社会政策
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ドイツの求職者生活保障制度と社会的包摂 : ハルツIV法施行後の上乗せ受給者への政策的対応を中心に(<小特集>労働市場と社会保障の新たなバランス)
森 周子
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2012 年 4 巻 2 号 p. 82-93

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抄録

ドイツの求職者生活保障制度は,2005年1月施行の通称「ハルツIV法」によって抜本的に改革された。本論文では,このハルツIV法施行後のドイツ求職者生活保障制度の現状と課題を,特に「上乗せ受給者」(就労しながら失業手当を受給する者)への対応に着目して考察する。就労を通じた求職者の社会的包摂のあり方を,(1)「イギリス的立場」(自らの就労によって最低需要を満たす所得を得ることを重視する)と(2)「フランス的立場」(就労自体に社会的意義を見出し,自らの就労によって最低需要を満たす所得を得ることを必ずしも重視しない=上乗せ受給者の存在の常態化を容認する)とに区別した場合,上乗せ受給者は,(1)からすれば失業状態から社会的包摂への過渡期と捉えられ,(2)からすれば社会的包摂の一形態とみなしうる。本論文では,ハルツIV法施行後のドイツにおいて,上乗せ受給者の社会的包摂がどちらの立場に基づいて展開しているのかを検討する。

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© 2012 社会政策学会
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