抄録
スウェーデンでは失業率が高止まりする中で,失業者への現金給付制度と就労支援制度の変更が重ねられた。実施機関には働くための努力をしない受給者に対して給付を止める権限があり,働くための福祉を強調する傾向がみられる。しかし,これらの変更は,スウェーデンの雇用政策において貫かれてきた就労原則の延長にあると理解することができる。2000年代の新しい特徴として,長期失業者の増加がある。長期失業者には障害者と移民(難民)が多く,彼らを対象にした現金給付制度においても就労原則を取り入れた変更が行われた。そして,職業安定所が彼らに労働市場プログラムを提供して就労支援を行う。したがって,自力では労働力市場に入れないような人に対して,労働市場プログラムが支援するように変化した。その結果,労働市場プログラムの社会的包摂の役割が増したと言える。