2015 年 7 巻 2 号 p. 27-38
先進諸国の少子高齢化は世界的な現象である。いずれの国にも家事介護労働力不足は共通した問題であり,政府は外国人労働者を導入して対応を図ってきた。国際間の労働市場を実質的にコントロールしているのは斡旋事業者である。その事業活動は,送出し国受入れ国双方においてリクルートから就労斡旋までのあらゆる段階を操作しており,人身売買を含む人権侵害や労働問題を多く惹起している。日本は非正規に家事介護労働者を導入しているが,増大する家事や介護ニーズの充足には程遠く,かえって権利侵害を醸成拡大している。一方東南アジアではASEAN諸国を中心に経済共同体が発足し,労働力の輸出を中心政策に据えている。日本国内の圧倒的な労働力補填ニーズと共鳴しながら,家事介護労働への外国人受入れの環境が整いつつある今,必要とされる施策方針を具体的に考察する。