プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
2000年度秋季
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4-4 プロジェクトのカオス現象
青木 一三
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 205-210

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抄録

プロジェクトの進捗度の経時変化がS字状のシグモイド曲線を示すことは一般によく知られている。 著者は1838年にベルギーの数学者ピエール・ベルハルストによって提案された資源に制約が有る時の生物種の増殖曲線を記述するためのロジスティックモデルもS字状のいわゆるロジスティック曲線を描くことに関心を持った。 このロジスティックモデルは現象が連続であるとして微分方程式表現となっているが、 これをそのまま差分方程式にすると、 カオス現象を示すことがロバート・メイの数値実験によって発見され、 (1974年のサイエンティフィックアメリカン誌に発表)後にリーとヨークらによるカオス現象の研究の端緒となった興味深い式であることを知った。 マメゾウムシの増殖試験でも成虫の世代が重ならないとき、 増殖曲線が滑らかなシグモイド曲線からはずれ、 振動を始めカオス現象を示すことが知られており、 メイの差分方程式はこれをよく表現しているとされている。 著者はプロジェクトで発生するカオス現象とメイの差分方程式に何らかの関連があるのではないかという率直な疑問を持った。 そこでロジスティックモデルを若干変えて非常に簡単なプロジェクト模擬モデル式を作った。 このプロジェクト模擬モデル式を差分方程式にして数値実験を行い、 これもメイの差分方程式と同じくカオス現象を示すことを確認した。 現実のプロジェクトでも極端な短納期プロジェクトや過去に一緒に作業したことのない組織に一部の作業をアウトソーシングする時、 コミュニケーションに問題が有るとカオス様現象が発生することが知られている。 著者はプロジェクトで発生する現実の現象とカオス現象を示すプロジェクト模擬モデル差分方程式との関連を考察する。

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