抄録
製造・流通業においては,経営命題の早期実現,外部環境変化へのスピードある対応,迅速な意思決定を目指し,業務改革と併せてERP(Enterprise Resource Planning)を基幹業務システムとして導入するケースが増えている.ERP導入プロジェクトにおいては,(1)当初の目的である業務改革をERPという手段と合わせて実現する,(2)ERPの持つ業務プロセスを適用してシステムを構築する,(3)全体導入,段階的導入の違いこそあれ適用業務範囲が広い,という特徴がある.また,ERPといっても大きなパッケージソフトウエアであり,移行やマスター設定が重要なプロジェクトマネジメントのファクタになる.導入方法論においては,(1)使える部分を使っていくコンセプト,(2)業種を代表とする各種テンプレート(ERPに対して,業種/サブインダストリー等に応じたビジネスシナリオやプロセスを元に,予めプレカスタマイズ,ライブラリ,ドキュメントを設定しておくひな型)適用によるコンセプトに大別される.最近では,これまでの大手企業を中心とした導入から中堅企業での適用が増え,より安価で短期間でのシステム構築が求められてきている.本稿では,昨今,このように導入ケースの拡がりをみせているERP導入プロジェクトに着目し,事例に基づいたより実践的なプロジェクトマネジメントにおける留意点を示し,今後のあり方にっいて考察を行う.