抄録
経営組織における伝統的な情報処理のパラダイムは,組織を「意思決定を行なう個人の集合体」として認識してきた.そこでは,規律や命令で成員を制御することによって組織の活動を管理していた.Galbraithによるマトリックス組織の設計もまた,このパラダイムに則っている.本研究では,日本下水道事業団のマトリックス組織におけるコミュニケーション活動を16種に分類して調査した.クロス分析とインタビュー調査の結果,日本下水道事業団では,公式のコミュニケーション・チャネルを組織環境の変化に応じて変更していることが判明した.筆者は,彼らが組織を「人々のコミュニケーションの集合体」と認識しており,コミュニケーション・チャネルの変更を通じてプロジェクトを効果的に管理していることを議論する.