抄録
ITシステムの障害の多くは,それを動かすソフトウェアに原因がある.そして,そのソフトウェアを開発,運用しているのが人(=ヒューマン)であり,人は時々ミスをする.そしてまた,障害による社会的影響の大きさを考えると,人によるミス(=ヒューマンエラー)を軽減させることが急務と考えられる.そこで筆者らは,どの企業でも存在する顧客からの障害やクレームの解決までの経緯を記述した「障害報告書」が再発防止・未然防止のために必ずしも有効に利用されていないことに着目した.ヒューマンエラーに関る研究事例の1つとして科学技術振興機構(JST)が提供している「失敗知識データベース」がある.その研究ではヒューマンエラー発生構成要素を「原因」,「行動」,「結果」に分類している.筆者らはそれらに「対策」を追加し,また,それらを組み合わせることで,障害の「原因」から「対策」までを可視化し,それらの適切性や有効性を検証することが容易なフレームワークモデル(HEMS)を提案する.そして,最後にHEMSを実業務に適用した事例を紹介する.