抄録
近年のソフトウェア開発は,従来の受注型SIのような顧客毎の案件ではなく,1つのソフトウェアを複数の顧客に展開するSaaSのようなサービス事業型へと急速にシフトしている.サービス事業は,SIのような個々のプロジェクトの管理とは異なり,その後の運用によりどのように投資回収するかといった観点からサービス全体を「プログラム」として捉え,その全体最適化を図ることが必要である.従って,サービス事業リスクマネジメントにおいて,リスク評価に用いるチェックリストには,従来のSIとは異なる評価視点が含まれるべきである.本稿では,サービス事業におけるリスクマネジメントを目的としたチェックリストの作成について述べる.まず,リスクを複数の区分に分割し,区分ごとにリスクを分類するRBS (Risk Breakdown Structure)と呼ぶ構造を構築した,次に,サービス事業のリスクを特定するために必要なチェック項目を抽出し,RBSの各区分に分類した.作成したチェックリストを運用しようとした場合,サービス事業の特性によっては無関係となるチェック項目が存在するという課題や,チェック項目数が多くリスク評価者の負荷が大きいという課題があることが明らかになり,無関係な項目の削除や評価者のロールやサービスのフェーズに応じて必要な項目のみを提示する機能を開発した.