抄録
現在,企業におけるIT環境は,柔軟性や迅速性ならびに運用性の向上等の要因により企業の経営戦略を支える重要な基盤となりつつある.その一つのツールとしてクラウドコンピューティング技術が注目されている.しかし,クラウドコンピューティングに対する不安,特にセキュリティに対する不安,サポート体制・障害時の対応が不安等の要因が挙げられている.このため,企業における現状のクラウド利用は,ハイブリットクラウド形態もしくはプライベートクラウド形態であり,クラウド本来のメリットであるコスト削減やグリーンIT促進に有効であるパブリッククラウド形態への移行はまだ十分ではない.我々は,これまでにパブリッククラウドにおける心理的障壁を中心としたリスクに対する研究を進めてきており,定性的な観点からその対策案を提案してきたが,定量的な検討が不十分であった.本論文では,これまでに提案してきたパブリッククラウド利用促進のための対策案に対し,新たに相対的なリスク値に基づく定量化を行なった結果について述べる.