抄録
本稿では,まずプロジェクトマネジメントにおけるリスクパターンのデータベース(リスクパターンベースと呼ぶ)の概念を提案する.次にその概念に基づき12の分野における350個のリスクパターンを収集し,それらを構造化したリスクパターンベースを構築した.その一つの応用として筆者らが所属する大学院のプロジェクト実践授業を対象としたリスク特定プロセスを支援するツールを開発した.使用評価の結果,学生はツールを使わない場合は平均6.3個,チェックリストを使った場合は平均4.3個.ツールを使う場合は学生によるプロジェクト全般で典型的なリスクを平均9.7個,各プロジェクトに独特なリスクを平均18.3個特定できた.この結果はその基礎となるリスクパターンベースの有効性を示している.