従来のリーダーシップ教育は知識の習得が中心であり,実際には現場で1つ1つ経験を積み重ねることでリーダーとしての素養を身につけてきた.しかし,今日のように急激な変化を続ける時代においては,スキルアップを加速させ,できるだけ早く実践の場面で活躍できるリーダーが求められている.シミュレータを活用し,疑似体験と実行動を結びつけた教育では,知識のみならず経験を得ることで,リーダーシップスキルをより速く習得できる.工学系大学院では,情報系や建設系の専攻を中心にプロジェクトマネジメント教育の導入が進んできている.スコープ,タイム,コスト,品質,調達などのテクニカルなマネジメントは,知識体系の講義と演習により教育効果が得られるが,ヒューマンスキルやその中心であるリーダーシップに関しては,従来から一般的に実施されている知識の講義と課題演習では実体験が乏しい学生に対しては教育効果が十分でない.今回,工学系大学院生に対し,技術的活動でのヒューマンスキルとリーダーシップ能力の向上を目的に,シミュレータにより多様な疑似体験をさせ,これに大学院研究室での実行動を摺り合わせることにより,知識,疑似体験,実行動を結びつけるリーダーシップ教育を実施したので報告する.
抄録全体を表示