抄録
L- 乳酸の融点が DL- 乳酸より高い一方で、L- リンゴ酸の融点は DL- リンゴ酸よりも低くなる。今回光学異性体をもつ物質における静的構造と融点の関係を調査する目的で、L- 乳酸、DL- 乳酸、L- リンゴ酸、DL- リンゴ酸の高エネルギーX線回折実験を行った。
乳酸の構造因子には FSDP が観測されたとともに、L 体と DL 体で構造因子に違いが観測された。一方で、リンゴ酸には FSDP がなく、L 体と DL 体で違いが観測されなかった。また、簡約二体分布関数の結果から乳酸では比較的長距離まで秩序が残っている一方で、リンゴ酸では明確な長距離秩序が観測されなかった。また、L- 乳酸の方が DL- 乳酸と比べ中距離秩序を生成しやすい影響で L- 乳酸の融点が高くなっていること、リンゴ酸では DL 混合体の方が分子間水素結合をもつ可能性が高くなる影響で DL- リンゴ酸の融点が高くなることが示唆された。