抄録
水溶液中で球状ミセルをなすドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ミセルについて、異常小角X線散乱測定を行うことにより、ミセル上に親水基が作る表面構造を抽出する解析方法を提案する。ここで、表面構造とは、ミセル表面上において親水基がつくる密度揺らぎによる濃淡構造を指す。SDS ミセルは、理論的な検討から親水基がミセルの表面の一部しか覆っていないと言われてきた。しかしながら、その表面での親水基の分布については、球面側方向の構造を測定することの困難さから、未だ直接実測されていない。本手法は、球面上の構造に対して実施された散乱実験の解析を可能にするものであり、これにより実測によるミセル上の親水基ドメインの大きさについての情報が抽出できる。