抄録
本研究では、励起子絶縁体(Excitonic insulator, EI)の候補として近年注目されている Ta2NiSe5 の関連物質で、通常のバンド絶縁体である Ta2NiS5 を対象として、19 GPa までの高圧において遠赤外領域(波数 200 -700 cm-1、光子エネルギー 0.025 ~ 0.09 eV)における光反射スペクトルを測定した。実験は SPring-8 赤外ビームライン BL43IR の高圧赤外分光実験装置を用いて行った。その結果、遠赤外領域の反射率はおよそ 6 GPa までは大きな変化を示さないが、それ以上の圧力では急速に増加した。この反射率増加の原因は、加圧によりエネルギーギャップが閉じて生じた自由キャリヤに起因するプラズマ反射であると考えられる。また、4 GPa 付近で、光学フォノンに起因するピークが顕著な消長やシフトを示しており、圧力誘起構造相転移を強く示唆している。