抄録
HAXPES分析により、16%Cr-0.3%Sn鋼板の大気環境下で形成された不働態皮膜を分析し、微量Snの化学状態に関する情報を抽出した。本実験では、O, Fe, Cr の影響を受けず光電子の検出感度が大きいSn 2p3/2の光電子スペクルを採取した。Sn 2p3/2の光電子スペクトルは3929~3931 eVにかけて広がりを持って検出された。これより、Snは、不働態皮膜中において金属Snに加えて、SnO2酸化物の化学状態で存在している可能性が高いと推察される。また、大気環境下においてCrを主体とする酸化皮膜が成長し、不働態皮膜中でのSn酸化物(SnO2)の生成も進行しつつあることが分かった。