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寿野 良二, 阿部 明子, 吉田 賢右
2015 年 3 巻 2 号 p.
283-285
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
多くのAAA
+プロテアーゼはリング構造を形成し、その中心の孔に基質ポリペプチド鎖をATP依存的に通して内部のプロテアーゼ活性部位に送り込むと考えられている(pore & chamberモデル)。その機能を発現するためにはATP加水分解に伴う構造変化が重要であることが知られているが、各反応ステップにおける詳細な分子機構の情報は未熟である。我々は膜結合型AAA
+プロテアーゼFtsHのAAA
+ドメインの構造変化に着目してX線結晶構造解析を行い、ATP加水分解中間体構造を決定した。構造情報からヌクレオチドの結合状態や構造変化を明らかにし、ATP依存的に構造変化することを原子分解能で明らかにした。
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周藤 浩士, 森脇 太郎, 池本 夕佳
2015 年 3 巻 2 号 p.
286-289
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
単一の微小粒子に対する赤外線分光測定を試みた。測定の背景には、赤外分光スペクトルと粒子形状の相関を得る目的がある。本プロジェクトでは微小粒子サイズを1ミクロンオーダーとし、粒子組成にシリケイト(SiO
2)を選んだ。測定波長帯は5ミクロンから25ミクロンである。本測定によりSiO
2の9ミクロン帯にある吸収フィーチャーの一部観測に成功した。しかし、1ミクロンサイズの単一粒子に対しては、吸収フィーチャーの詳細を取得できるほどの信号強度は得られていない。詳細なフィーチャーの測定のためにはサンプルへの照射光輝度を高める必要がある。
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Tatsuo Fukuda, Alfred Q.R. Baron, Hiroshi Uchiyama, Hiroki Nakamura, M ...
2015 年 3 巻 2 号 p.
290-293
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
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We investigated acoustic phonons of PrFeAsO
1-y precisely to select between two different models: the in-plane soft and clipped. These predict different contamination of the longitudinal phonon by transverse one. We could reduce the contamination with improved Q resolution, but the data quality was insufficient.Based on Q dependence slightly better agreement was found with the in-plane soft model.
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阿部 義人, 白石 充典, 荒牧 峻彦
2015 年 3 巻 2 号 p.
294-297
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
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大腸菌においては紫外線照射などで生じるDNA損傷後、DNAの修復系が作動する。修復後、蛋白質複合体プライモソームが形成され、プライモソームを起点としてDNA複製が再開始されると考えられている。本研究ではプライモソームの一つの因子であるDnaT、PriCの機能解明を目指し立体構造をX線結晶構造解析により明らかにすることを目的として実験を行った。
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松隈 大輔, 渡邊 宏臣, 星野 大樹, 篠原 貴道, 菊地 守也, 高原 淳
2015 年 3 巻 2 号 p.
298-301
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
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結晶性バイオベースポリマーであるポリ乳酸(PLA)の溶媒蒸発下における結晶構造形成過程を、SPring-8 BL40B2の微小角入射X線散乱/回折(GISAXS/GIWAXD)測定により明らかとした。この目的のため、その場観測用のステージを新たに開発し、溶媒揮発過程における散乱/回折プロファイルを経時取得に成功した。詳細な解析の結果、溶媒分散状態から固化過程において、PLA薄膜中の結晶サイズは増大してはおらず、時間と共に同程度の結晶核と微結晶の数が増加していることが明らかとなった。
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高原 淳, 村上 大樹, 星野 大樹, 篠原 貴道, 檜垣 勇次
2015 年 3 巻 2 号 p.
302-305
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
高分子電解質ブラシ/水界面の分子鎖凝集構造をX線反射率測定による評価を試みた。測定のための溶液セルを試作した。陽イオン性、陰イオン性の高分子電解質ブラシに比べて、それらの共重合体を用いた場合には界面粗さが増大したが、塩水溶液中ではその差は小さかった。高分子鎖内の静電相互作用、また水溶液中の塩によるその遮蔽効果による高分子電解質ブラシ分子鎖形態の変化を、X線反射率測定によって適切に評価できる可能性を示した。
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浦川 啓, 中塚 明日美, 寺崎 英紀, 上杉 健太朗
2015 年 3 巻 2 号 p.
306-310
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
Fe-Ni-Sメルトの密度をX線吸収密度測定法から約6 GPaまでの圧力で求めた。トモグラフィ用高圧プレスを用いた高温高圧X線マイクロCT測定から、X線の吸収率と試料長を測定してランベルト・ベールの法則から密度を決定した。測定したFe
56Ni
6S
38組成メルトの密度をVinetの状態方程式で解析した結果、等温体積弾性率KTが26±3 GPaと求まった。
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浦川 啓, 寺崎 英紀, 上杉 健太朗
2015 年 3 巻 2 号 p.
311-314
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
かんらん石中のFe-Ni-Sメルトの平衡組織の観察を目的として、トモグラフィ用高圧プレスを用いた高温高圧 ’その場’ X線CT測定を行った。高圧プレスの揺動などの高温高圧CT測定の本質に関わる課題の洗い出しと対策を行った。しかしながら、圧力媒体からの散乱X線の影響により透過像から再構成したCTイメージが不鮮明になったため、当初の目的とした高分解能の三次元組織を観察できなかった。
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岸本 俊二, 依田 芳卓, 春木 理恵
2015 年 3 巻 2 号 p.
315-318
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
イリジウム(Ir)193(核励起準位:73.04 keV、半減期:6 ns)は、“軌道電子遷移による原子核励起” (NEET)が観測可能な核種である。金197ではNEETによる原子核励起が観測されるだけでなく、核励起が観測され始める入射X線エネルギーより高い側で励起事象数にXAFSと似た微細構造が観測される。今回の実験では、イリジウム193を含む厚さが均一な金属箔(厚さ50 µm)を試料として使用することと、できるかぎり統計精度を改善して測定することでイリジウム193のNEET微細構造の観測を試みた。
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佐藤 康裕, 三宅 雄大郎, Christopher J. Hipolito, 山口 知宏, 中津 亨, 菅 裕明, 加藤 博章
2015 年 3 巻 2 号 p.
319-323
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
MsbAはABCトランスポータースーパーファミリーに属するタンパク質であり、Lipopolysaccharideの前駆体であるLipidAを細胞内膜の脂質二重層の内葉側から外葉側に輸送するフリッパーゼとしての機能を持つ。本研究では、
Esherichia coli 由来MsbA(EcMsbA)の高分解能立体構造解析の実現を目指して各種結晶の調製とX線回折実験を行った。
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鳥海 幸四郎, 堀本 泰洋, 山崎 隆博, 井上 敬章, 髙﨑 亜希, 山下 大輔, 山中 宏晃, 満身 稔, 小澤 芳樹, 宋 哲昊, 坂 ...
2015 年 3 巻 2 号 p.
324-328
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
表面が広く平坦な基板結晶と別の基板結晶上に薄膜単結晶をエピタキシャル成長させた試料について、放射光X線マイクロビームを用いたすれすれ入射X線回折実験を行い、基板結晶表面および薄膜単結晶からの回折X線強度を測定した。基板結晶は表面サイズ1.10×0.99 mm
2、表面の凹凸0.15 μmであり、エピタキシャル結晶は表面サイズ0.64×0.45 mm
2、表面の凹凸1.0 μm、膜厚は1.4 μmであった。測定した積分反射強度についてLp補正と吸収補正を行い|Fo|
2を求め、結晶構造から計算した|Fc|
2と比較してR(F
2)を求めた。基板結晶ではR(F
2)=0.04~0.10、薄膜結晶ではR(F
2)>0.53であった。しかし、薄膜結晶について適切に測定された反射のみではR(F
2)=0.03~0.10であり、広く平坦な結晶では表面層の単結晶構造解析が可能であることが示された。
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山内 貴恵, 藤井 知実, 老川 典夫, 畑 安雄
2015 年 3 巻 2 号 p.
329-332
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
γ-レゾルシン酸代謝に係る遺伝子群由来で機能不明なGraEタンパク質の立体構造-機能解析を行うため、Native結晶の4 Å分解能の回折強度データおよびセレノメチオニン置換体結晶に対し3波長で6 Å分解能の回折強度データを収集し、両結晶の空間群を
P2
12
12と決定した。分子置換法および多波長異常分散法による構造解析を試みたが、結晶の回折能が低く放射線損傷が大きいために、データ分解能が不十分で未だ妥当な解が得られず、解析続行中である。
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岸田 恭輔, 岩竹 佑樹, 乾 晴行
2015 年 3 巻 2 号 p.
333-335
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
La
2Ni
7を室温付近で水素化を行った場合、圧力-組成等温線(PCT曲線)には3段階のプラトーが観察されるが、水素化の各段階における構造変化についてはいまだ不明な点が多い。本研究ではPCT曲線の各プラトーまで水素を吸蔵放出させた後に得られるLa
2Ni
7水素化物の結晶構造をSPring-8の放射光粉末X線回折を用いて調査した。30°Cおよび80°C第1プラトーまで水素吸蔵放出後に観察される水素化物と、第2,第3プラトーまで水素吸蔵放出後に観察される水素化物はいずれも斜方晶の対称性を有しているが、異なる結晶構造を持つことが明らかとなった。
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亀井 真之介, 石垣 雅, 上松 和義, 戸田 健司, 佐藤 峰夫
2015 年 3 巻 2 号 p.
336-339
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
放射光を用いた粉末X線回折で、紫外線励起で青色発光するLi(Sr, Mg)PO
4:Eu
2+蛍光体の結晶構造解析を行った。リートベルト法による分析により、Mgを固溶させたLi(Sr, Mg)PO
4:Eu
2+蛍光体は、低温相のorthorhombic生成領域の合成温度900℃であったにも関わらず、高温相のhexagonalの結晶構造であったことが確認された。
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宮川 繁, 福島 五月, 伊東 絵望子, 樋口 貴宏, 八木 直人, 星野 真人, 上杉 健太朗
2015 年 3 巻 2 号 p.
340-342
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
iPS細胞の腫瘍解析を目指して、マウス全身の高分解能三次元CT撮影を行った。マウスは安楽死後凍結して保存し、室温に戻した後に撮影を行った。ピクセルサイズは15ミクロンである。BL20B2の幅広いビームと広い撮像範囲を持つ高分解能X線検出器を用いれば、マウスの全身撮影も比較的容易であることが示された。また、X線の屈折を用いた内臓撮影の可能性が示された。
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井上 倫太郎, 茶谷 絵理, 金谷 利治
2015 年 3 巻 2 号 p.
343-345
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
アミロイド線維は、タンパク質のミスフォールディングにより形成されるタンパク質の超分子集合体であり、アミロイドーシスをはじめとする疾病に関わる立体構造として高い関心を集めている。本研究では、モデルタンパク質であるインスリンに注目し、小角X線散乱を用いてアミロイド線維構造の形成過程におけるタンパク質の集合機構の解明を試みた。塩濃度依存的に観察される2種類の異なる形成経路をそれぞれ解析した結果、両経路ともに初期段階での規則だった集合体形成を観測することができ、アミロイド線維形成初期イベントに関する新しい知見を得ることができた。
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森脇 太郎, 池本 夕佳, 二宮 利男
2015 年 3 巻 2 号 p.
346-350
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
微小な法科学試料を、高輝度赤外放射光と通常実験室光源を用い、それぞれ分光スペクトルを測定した。試料サイズと測定領域が小さいほど、赤外放射光の高輝度性が優位に働き、S⁄N比が高く、吸収度の飽和現象が起こらないスペクトルを得られた。このことから赤外放射光の有用性が確かめられた。
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片山 芳則, 齋藤 寛之, 青木 勝敏
2015 年 3 巻 2 号 p.
351-355
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
高濃度の水素を含む液体金属を探査するため、高温高圧下の水素流体中でチタン水素化物TiH
2のX線回折その場観察実験を行った。試料を約5 GPaまで加圧し水素源とともに加熱したところ、一度だけ融体が観測されたが、同様の実験を複数回行っても融解は再現しなかった。再現性のない理由が不明であるため、これらの結果からTiH
2の融解や液体の構造を議論することは困難と判断した。
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横山 大, 今泉 京, 吹留 博一, 吉越 章隆, 寺岡 有殿, 末光 眞希
2015 年 3 巻 2 号 p.
356-359
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
酸素雰囲気下におけるSi基板上3C-SiC薄膜のグラフェン化過程の時間発展を明らかにするために、極微量酸素雰囲気下におけるSi(111)基板上3C-SiC(111)薄膜表面上グラフェン化過程をリアルタイムX線光電子分光(XPS)により測定した。その結果、微量酸素添加による3C-SiC薄膜上グラフェン化は、SiC結合の解離過程に律速されている可能性が高いことが明らかになった。また、酸素添加アニールが3C-SiC(111)基板以外でも有効かを明らかにするためにSi(100)基板上3C-SiC(100)薄膜に対しても同じく酸素微量添加下でグラフェン形成を試み、グラフェン形成を確認すると共に、形成薄膜の角度分解XPS評価を行った。
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伊藤 孝寛, 丹羽 亮輔, 羽尻 哲也, 志村 祐亮, 木村 真一, B. M. Ming, Y. S. Kwon
2015 年 3 巻 2 号 p.
360-362
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
希土類カルコゲナイド系は電荷密度波状態を示す典型系として知られている。今回我々は半導体的な物性を示すGdTe
2における本質的な電子状態を明らかにすることを目的として高分解能軟X線角度分解光電子分光(SX-ARPES)を行った。その結果、Γ点近傍におけるホール面を形成するバンド分散を観測することに成功した。観測されたバンドはフェルミ準位近傍において強度が抑制されることから、フェルミ面ネスティングによる電荷密度波ギャップを伴う状態に帰結されると考えられる。また、バンド構造のバルク敏感性に伴う違いから、VUV-ARPESにおいて観測される金属的なバンド分散が表面バンドに由来する可能性が示唆される。
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伊藤 仁彦, 久保 佳実, 松下 能孝, 吉川 英樹, 坂田 修身
2015 年 3 巻 2 号 p.
363-365
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
シリコン(Si)を含む負極(Si系負極)において、1度充電すると次の放電以降の電池容量が減少するいわゆる不可逆容量の問題があり、その原因と解決策を探るため、放射光を用いた分析手法として粉末X線回折(XRD、課題番号2011B4511)および硬X線光電子分光(HAXPES、課題番号2011B4605)の適用試験を行った。その結果、XRD実験では初回充電でSi系負極中のSiナノ結晶が破壊される状況を捉え、HAXPES実験ではSi中にリチウム(Li)が侵入し化学状態が変化している可能性を観測した。
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柏木 立己, 宮野 博, 秋山 広明
2015 年 3 巻 2 号 p.
366-368
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
L-フェニルアラニンの水和物結晶の粉末結晶構造解析を実施した。粉末回折データはSPring-8のBL32B2で収集した。結晶の空間群は
P2
1、格子定数は
a= 13.79(1) Å、
b= 5.427(8) Å、
c= 12.13(2) Å、
β=100.078(3)°であった。非対称単位中には2個のL-フェニルアラニン分子と1個の水分子が含まれ、疎水性の層と親水性の層が交互にa軸方向に重なり合う構造をとっていた。
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小林 隆嗣, 田中 智子, 釜阪 寛
2015 年 3 巻 2 号 p.
369-373
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
フッ化物のハイドロキシアパタイト (HAp) への浸透度によって、歯の再石灰化後の耐酸性や硬さなどが変わる。取り込まれたフッ素の組成および定量ができれば、むし歯予防に有効な研究手法となる。本研究では、リン酸化オリゴ糖カルシウム (POs-Ca) をモデルとして、カルシウム種によってフッ素の浸透度がどのように変わるかをフッ素K吸収端に対するX線吸収微細構造(XAFS) を利用して解析し、フッ素取り込みが既存HApではなく、新たな結晶回復で起こること、通常のカルシウムよりもフッ素取り込みがスムーズに進むことが示唆された。
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築部 卓郎, 八木 直人, 関口 博史, 池本 夕佳
2015 年 3 巻 2 号 p.
374-379
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
BL43IR赤外分光ビームラインにおいて、ヒト大動脈壁病理標本のFTIRマッピングを行った。5ミクロンピッチで40 × 60点の二次元吸収分光マップを作成することができた。3300 cm
-1付近の吸収ピークの強度は、大動脈壁中膜に存在するエラスチンの弾性板と構造的に一致する分布を示したが、この結果の解釈については、今後の検討が必要である。
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橋本 佳洋, 松本 健志
2015 年 3 巻 2 号 p.
380-384
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では、全身性微振動(WBV)と副甲状腺ホルモン(PTH)断続的投与の骨修復促進に対する相乗効果について、卵巣摘除による骨粗鬆症発症マウスおよび健常マウスの脛骨に作製したドリル欠損部を対象に、3次元CTによる形態解析,放射光赤外顕微分光による材料特性解析およびナノインデンテーション試験による力学特性解析による実験的検討を行った。その結果、WBVとPTHの併用は再生骨のネットワーク形態に相乗的に作用することが示唆された。一方、再生骨の材料特性および力学特性への効果は認められなかった。
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石山 修, 山口 博隆
2015 年 3 巻 2 号 p.
385-387
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
窒化処理を行った後のSiO
2 ⁄ SiC界面に取り込まれた窒素原子の化学状態を軟X線光電子分光法により解析した。窒化処理を行った試料においては、HFエッチングにより酸化膜を完全に除去した状態においても窒素原子はSiC表面に残存しており、Si 2pスペクトルのショルダー部分の形状が変化していることが見出された。これはSiC表面においてSi-C
3N結合が形成されていることに起因すると考えられる。SiC基板の最表面には窒化処理により導入された多くの窒素原子が結合していることが示唆される。
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稲益 悟志, 森脇 太郎, 池本 夕佳
2015 年 3 巻 2 号 p.
388-391
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
効率的に毛髪用製剤を開発するためには、毛髪内部へ製剤成分の浸透性を直接的にかつ簡便に解析することが重要となる。本研究においては顕微IRを用いて毛髪内部に局在する物質を直接解析し、適用した製剤の物質浸透性及び局在部位を確認する事を目的とした。その結果今回、毛髪内部へのシロキサン化合物の微細な局在分布情報が明らかになってきた。
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伊藤 孝憲, 平山 明香, 本間 徹生
2015 年 3 巻 2 号 p.
392-396
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
固体酸化物型燃料電池(SOFC)の空気極材料は低温化、安定性においてもっとも重要な課題を抱えている。それらの課題解決には遷移金属の価数、更にはそれらの熱力学的な考察が重要であることが知られている。しかし、空気極材料は複数の遷移金属を含み古典的な熱天秤や滴定によって価数を求めることができない。そこで本課題では中温作動型SOFC空気極材料として利用されている(La
0.6Sr
0.4)(Co
0.2Fe
0.8)O
3-δ (LSCF)、低温作動型として期待される(Ba
0.5Sr
0.5)(Co
0.8Fe
0.2)O
3-δ (BSCF)のCo、Fe-K吸収端について様々な温度、酸素分圧でin situ X線吸収スペクトル(XASF)を測定することでCo、Feの価数、熱力学パラメータを議論した。Co、Feの部分モルエンタルピー、部分モルエントロピーからCo価数の方がFe価数より増加しやすいことが分かった。
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梶原 堅太郎, 松本 拓也
2015 年 3 巻 2 号 p.
397-402
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
X線トポグラフィによるシリコン単結晶の観察において転位像を強調するために、回折角度をロッキングカーブの中央の角度からわずかにずらしてX線トポグラフ像を測定した。単に試料をわずかにずらすだけでは、試料内の方位分布により回折条件を満たす領域が狭いため、回折角度を走査しながらデジタルカメラを用いてX線トポグラフィを測定し、画像処理を行うことで方位分布を補正した。その結果、試料の広い範囲において転位像を強調することができた。
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秦野 正治, 陰地 宏, 田村 佑一, 盛田 智彦, 八木 教明, 古川 清志
2015 年 3 巻 2 号 p.
403-406
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
HAXPES分析により、16%Cr-0.3%Sn鋼板の大気環境下で形成された不働態皮膜を分析し、微量Snの化学状態に関する情報を抽出した。本実験では、O, Fe, Cr の影響を受けず光電子の検出感度が大きいSn 2p
3/2の光電子スペクルを採取した。Sn 2p
3/2の光電子スペクトルは3929~3931 eVにかけて広がりを持って検出された。これより、Snは、不働態皮膜中において金属Snに加えて、SnO
2酸化物の化学状態で存在している可能性が高いと推察される。また、大気環境下においてCrを主体とする酸化皮膜が成長し、不働態皮膜中でのSn酸化物(SnO
2)の生成も進行しつつあることが分かった。
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上田 恭太, 本間 徹生
2015 年 3 巻 2 号 p.
407-411
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
白色LEDランプ用黄色蛍光体RE
3Al
5O
12:Ce(RE=Y, Lu)の発光中心Ceイオンの価数および周辺の局所構造の19 Kから室温までの温度依存性をX線吸収微細構造(XAFS)測定により調べた。本報告では、Y
3Al
5O
12:Ce系における発光中心のCe局所構造の違いをデバイワーラー因子によって認めることができず、その局所構造とCe
3+発光の温度特性との関係性を検討することは難しかった。
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森井 克行, 有元 洋一, 松並 越成, 川端 竜也
2015 年 3 巻 2 号 p.
412-414
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
HAXPESを用いて、有機無機ハイブリッドLEDの劣化前後の有機層の変化をS 1sの測定により明らかにした。劣化後、有機バルク層を起源とする2474 eV近傍のピークが大きく減少しており、バルク中の有機層の一部が化学的に大きく変化していることを示唆する結果となった。
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吉田 正人, 鈴田 和之, 上門 潤一郎
2015 年 3 巻 2 号 p.
415-419
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
人毛の縮毛矯正において酸化剤の代わりにS-カルボキシメチル-3-アラニルジスルフィドケラチン(CMADK)を用いた際の毛髪内部構造に及ぼす影響についてマイクロビーム小角X線散乱測定を行い評価した。分子量3,000程度のCMADKを用い加熱処理を行った場合、通常の縮毛矯正と同程度の縮毛矯正効果が得られた。分子量50,000程度のものを用いた場合、若しくは加熱処理を行わなかった場合、矯正効果は得られなかった。矯正効果が得られた毛髪では内部の中間径フィラメント間の間隔が増加していたことから、浸透したCMADKが加熱によってタンパク質間に橋かけすることで形状を変形、維持していると推測された。
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土井 教史, 高部 秀樹, 佐藤 眞直
2015 年 3 巻 2 号 p.
420-422
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
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構造用鋼材の強度特性の制御因子としての組織形態に関する知見を得るため、複相組織を有する鋼材中の応力ミクロ分布測定を行った。制御された外力を印加しながら、マイクロビーム化された白色X線を試料に照射し回折データを得た。いくつかの外力印加条件での測定を行い解析することで、結晶粒ごとの局所的な弾性歪みを評価することができた。今後、組織形状や比率などの異なる試料での測定を行い比較することで、強度特性と組織因子の定量的理解が期待できる。
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高橋 洋祐, 西堀 麻衣子
2015 年 3 巻 2 号 p.
423-425
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
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固体酸化物形燃料電池(SOFC)に用いるAg触媒を複合化した酸素イオン伝導材料LaSrTiFeO
3系材料について、作動条件(高温かつ酸化還元雰囲気下)での材料挙動を、in-situ XAFS法で解析した。高温還元雰囲気下では、Feに近接する酸素が欠損する挙動が現れるが、Ag触媒を複合化しない材料と同等の傾向であり、一方、複合化したAg触媒には大きな価数変化がないことから、Ag触媒を複合化していない材料と比較して、耐久性は同等であり低下しないことが明らかとなった。
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菅原 洋子, 山村 滋典, 三浦 圭子
2015 年 3 巻 2 号 p.
426-429
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
水和物結晶の疑似多形間の転移現象の観測では、室温における湿度条件に依存した転移よりも、高温・高水蒸気圧条件下での脱水転移の方が結晶性の保持が良好である、もしくは、各状態の分離が良好となる系が見いだされている。BL19B2の粉末回折装置に付属する湿度制御装置と高温吹付装置を併用して、温度および水蒸気圧同時制御下での測定を行い、本測定法の利用価値を検証した。今後の利用展開が期待される。
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行木 啓記, 中西 裕紀
2015 年 3 巻 2 号 p.
430-433
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
各種触媒材料への応用を目的とし、液中プラズマ法により合成した銀ナノ粒子溶液をXAFS(XANES)により測定した。その結果、水溶液中の銀ナノ粒子の化学状態は、NH
4OH水溶液中では Ag
2O、NH
4NO
3水溶液中ではAg
+(aq)、NaNO
3水溶液あるいは水中では銀ナノ粒子の状態である、すなわち水溶液の種類により異なることが明らかになった。一般にこれらの銀ナノ粒子を触媒として使用するにはこれらの水溶液を基板上に噴霧・乾燥して析出させ、固体状態で利用するが、この固体状態における触媒性能(酸化還元電位変化、⊿V)は、プラズマ処理後の水溶液中の銀の化学状態がAg
2OまたはAg
+(aq)の状態、すなわち、酸化状態であること及びこれが固体状態になった時、価数が 0価の銀ナノ粒子であるときに、大きくなることが明らかになった。
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八木 康洋, 小林 栄司, 松葉 豪, 趙 雲峰, 辺見 幸大, 乳井 樹
2015 年 3 巻 2 号 p.
434-437
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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炭素被覆コバルト粒子/エポキシ樹脂複合材料の極小角X線散乱測定を行い、複合体中の炭素被覆コバルト粒子の凝集状態を評価した。異なる濃度の複合体試料を測定し、それぞれの散乱プロファイルを比較した結果、炭素被覆コバルト粒子の大きさに相当するピークと凝集体の大きさに相当するピークが出現することが分かった。そして、試料中の炭素被覆コバルト粒子の濃度の変化に伴って凝集状態に変化が生じることを確認した。
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飯原 順次, 米村 卓巳, 中村 元宣
2015 年 3 巻 2 号 p.
438-440
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
微量のフッ素を添加したシリカガラスは、紫外領域の透明性に優れているが、レーザー照射によって透過率が低下することがある。この原因解明のためにフッ素の化学状態変化に着目して調査した。その結果、レーザー照射前後での系統的なフッ素の化学状態変化を見出すことはできなかった。
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山田 祐貴, 高橋 洋祐, 西堀 麻衣子
2015 年 3 巻 2 号 p.
441-445
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
自動車排ガス浄化用助触媒として開発しているコアシェル構造を有するセリアジルコニアについて、600~800°Cかつ酸化還元雰囲気での材料挙動を、In-situ XAFSで解析した。表面にCeを濃化したセリアジルコニアでは中心部のジルコニア粒子径が小さくなるほど上記条件下においては低温酸化還元雰囲気でのCe価数変動が大きいことが明らかになった。コアシェル構造のセリアジルコニア材の排ガス浄化特性の一部が明らかになった。
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渡邉 慶樹, 伊藤 雅章
2015 年 3 巻 2 号 p.
446-450
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
固体高分子形燃料電池(PEFC)用のNiコアPtシェル触媒の加湿状態および還元状態でのin-situ XAFS解析を行った。Pt L
Ⅲ吸収端の測定では、400°C以上の温度域でコアシェル構造が崩れ、合金化することが判明した。また、Ni K吸収端の測定では、酸化還元状態がはっきりとわかり、それが触媒劣化に起因しているものと推察できた。
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藤川 陽子, 坂山 弘樹, 菅原 正孝, 魏 明林, 橋口 亜由未, 谷口 省吾, ルータス ポール, 本間 徹生, 平山 明香
2015 年 3 巻 2 号 p.
451-456
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
ボルタンメトリ法による水質分析は、As, Cd, Hg, Se, Pb等の定量下限がICP-質量分析のそれに近く、かつ装置が安価・携帯型かつ低維持費というメリットがある。一方、同法による測定では、環境試料の測定前後で測定感度やバックグラウンド電流が変化するなどの事象が測定誤差のもととなっている。その背景にはボルタンメトリ法に使用する作用電極の表面状態の動的な変化があると考え、転換電子収量XAFSを適用して検討を行った。電極表面に形成された金の膜厚は1-100 nmの範囲と推定されるがS/N比の十分なスペクトルを得ることができた。膜厚の変化がX線吸収スペクトルのジャンプ高さに反映されていると見られた。一方、XAFSスペクトルから見る限り電極上の金は金属状態で、ボルタンメトリ測定時の測定感度に影響を及ぼす金の塩化物や硫化物の形成は本法では検出できなかった。
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中井 善一, 塩澤 大輝
2015 年 3 巻 2 号 p.
457-460
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
回折コントラストイメージを用いた結晶3Dマッピング法は、結晶の位置や形状,結晶方位などの組織観察を可能とする。本研究は、SPring-8において結晶3Dマッピング法を開発し本疲労損傷やクリープ損傷などを定量的に評価する手法を構築することを目的とする。本課題実験では、電動アクチュエータを用いた引張試験機を作製し、測定ステージ上で引張および繰返し負荷を与えながら撮影を行うことで、結晶3Dマッピング法による結晶の塑性ひずみの評価への適用性について検討を行った。引張負荷を変化させながら弾性域および塑性域の変形下における結晶マッピングを試みた結果、連続的に結晶の変化を観察することができた。さらに回折スポットが現れる角度範囲Δω
diffに着目すると塑性変形下では引張負荷が大きくなるほど各結晶におけるΔω
diffが大きくなることが分かり、これらの情報を用いて結晶ごとの塑性ひずみや損傷程度を評価することが可能になるものと考えられる。
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近藤 大雄, 林 賢二郎, 山口 淳一, 佐藤 信太郎, 横山 直樹
2015 年 3 巻 2 号 p.
461-463
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
我々はグラフェンのチャネル材料としての高いポテンシャルに着目し、次世代CMOSチャネル候補として大面積基板上での成長技術やFETトランジスタ作製プロセス開発を行ってきた。今回、原子層堆積法や電子ビーム蒸着法などの異なる方式で作製した絶縁膜とグラフェンの界面電子状態を硬X線光電子分光により調べることで、現在想定し得るゲート絶縁膜候補材料とグラフェン界面での電子状態から絶縁膜としての適性の検討を行った。その結果、グラフェン直上にはSiO
2やAl酸化膜を絶縁膜として堆積することが望ましく、その上に別途High-k等の絶縁膜を堆積すれば良いことがわかった。今後さらなる検討を行い、グラフェンFET作製プロセスの最適化を推し進める予定である。
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舘野 泰範, 飯原 順次, 米村 卓巳, 富永 愛子, 斎藤 吉広, 河内 剛志, 辻 幸洋, 大沢 仁志, 宇留賀 朋哉
2015 年 3 巻 2 号 p.
464-468
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
窒化ガリウム系電子デバイス(GaN-HEMT)において、表面保護膜とGaNとの界面状態の評価を目的として、マイクロビームX線を入射した斜出射XAFS法による評価を実施した。GaN表面をO
2プラズマ処理し、その表面に窒化膜(SiN)を堆積したサンプルで、SiN堆積直後のものと、それを高温アニール処理したものを比較したところ、SiN堆積直後にはGaN表面にGa
2O
3が存在するが、高温アニール処理によってこの酸化物層が金属状Gaに変化していることが確認できた。これは、過去に同じサンプルで行った硬X線光電子分光(HAXPES)評価と同じ結果である。
また、GaN-HEMTのエピ構造において、周辺に何もない状態と比べ、金属電極に挟まれた領域ではGaN表面状態が変化しているらしいことが確認できた。この表面状態の変化は、SiNがGaNに及ぼす応力による結晶歪みの違いによるものと推定している。
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土井 教史, 高部 秀樹, 佐藤 眞直, 宮澤 知孝
2015 年 3 巻 2 号 p.
469-471
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
構造用鋼材の強度特性の制御因子としての組織形態に関する知見を得るため、複相組織を有する鋼材中の応力ミクロ分布測定を行った。制御された外力を印加しながら、マイクロビーム化された白色X線を試料に照射し回折データを得た。いくつかの外力印加条件での測定を行い、解析することで、結晶粒ごとの局所的な弾性歪みを評価することができた。得られた結果は。今後、組織形状制御技術に反映させ、材料設計に活用する。
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人見 尚
2015 年 3 巻 2 号 p.
472-475
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
海水で練り混ぜたセメント(海水系セメント)に対し、硝酸アンモニウム溶液浸漬によるCa溶脱前後の内部組織変化についてX線CTによる観察を行った。その結果、海水系セメント材料にシリカフュームを混和することによって、可溶性の水酸化カルシウムが難溶性のカルシウムシリケート化合物に変質し、Caの溶脱を防ぐ効果のあることが分かった。また、海水を混ぜていないセメントおよび海水系セメントに特殊混和材を混ぜたセメントと比較することにより、海水の添加がカルシウムシリケート化合物の変質を抑える傾向にあること、特殊混和材の使用は、その変質抑制の効果を高めることが分かった。これによって、海水を用いたセメントの溶出劣化程度は、通常のセメントに比べて低くなることを確認した。
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杉山 明, 安田 秀幸, 柳楽 知也, 上杉 健太朗
2015 年 3 巻 2 号 p.
476-478
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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オープンアクセス
鋳鉄では、晶出するグラファイトの形態が力学的性質に及ぼす影響が大きく、様々な研究が行われてきた。本研究では、グラファイトの晶出過程を詳細に直接観察することによって、その形成過程を明らにすることを目的とする。観察はイメージングのビームラインであるBL20XUで実施した。10×10×0.1 mmの試料を真空チャンバー内で溶解し、一定速度で冷却する場合の凝固過程を記録した。亜共晶組成の場合、初晶オーステナイトのデンドライトに続き、粒状グラファイトが晶出した後、共晶組織が成長した。一方、過共晶の場合、初晶のグラファイトが成長し、オーステナイトのデンドライトが先行して晶出した後、粒状グラファイトおよび共晶組織がほぼ同時に晶出した。
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牧野 泰三, 根石 豊, 中井 善一, 塩澤 大輝
2015 年 3 巻 2 号 p.
479-482
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
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転動疲労は表面内部の介在物からき裂が発生・進展するため、介在物寸法や基地組織の高強度化などの転動疲労メカニズムにおける影響を直接的な観察に基づいて検討したものはほとんどない。そこで本課題実験ではSPring-8の放射光を用いたCTイメージングと新たに開発した小型転動疲労試験機を用いて、同一試験片について転動疲労き裂進展挙動を直接観察することを試みた。また、人工欠陥を導入した試験片に対して、開発した転動試験機を用いて、人工欠陥からの転動疲労き裂観察を行うことで、その場観察スキームの構築を行った。その結果、繰返し数に対するき裂発生および進展挙動を得ることが可能となった。さらに試験片形状を改良することにより、実際の介在物においても同一試験片を用いた転動疲労過程の観察が可能であることが明らかとなった。
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山本 法寛, 藤下 翔平, 冨永 哲雄
2015 年 3 巻 2 号 p.
483-487
発行日: 2015/07/21
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
固体高分子型燃料電池用の高分子電解質の相分離構造に関する基礎データを得るため、温度および湿度を制御した条件で高分子電解質膜の小角X線散乱(SAXS)および超小角X線散乱(USAXS)測定を行った。フッ素系および炭化水素系の高分子電解質膜において、親水部および疎水部の周期構造に由来するピーク位置・形状に違いが見られたほか、湿度の上昇に伴い親水部のコントラスト増大およびクラスター間距離増大に起因するピークの変動が観察された。
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