抄録
2元共晶合金であるPb-Sn系について、液体中の密度ゆらぎの状態を直接観測するため、組成および温度を変化させながら系統的に小角X線散乱(SAXS)測定を行った。これまでの研究では、共晶点近傍で密度ゆらぎが大きくなることが一部で主張されてきたが、直接的な証拠は無かった。今回2011B、2012A、2012B期の3期にわたる一連の測定により、少なくとも共晶点がそういった密度ゆらぎの特異点ではないことが確認できた。一方で、共晶点から離れた組成において、融点近傍における小角散乱強度の有意な上昇が見られた。これは、過去の研究では議論されていない密度ゆらぎの存在である。この結果は、小角X線散乱測定が今後液体合金の研究に新たな進展をもたらす可能性を示している。