抄録
BL46XUの硬X線光電子分光(HAXPES)装置を用いて低分子系有機薄膜太陽電池の典型的な光電変換層である亜鉛フタロシアニン(ZnPc)とC60フラーレン(C60)の電子構造を観測した。プローブ光として約8 keVの放射光を用いた場合、ZnPc薄膜上に製膜した膜厚30 nmのC60層を通して、ZnPcからの光電子信号が観測可能であった。また、C60をZnPc薄膜上に積層した試料と、C60とZnPcを混合したバルクヘテロ試料では内殻準位の束縛エネルギーに差が見られ、バルクヘテロ試料内では、ZnPcからC60への電荷移動が広く生じていることが示唆された。