抄録
氷点下環境における固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電性能低下改善、および耐久性の向上に関連して、PFECを構成する基材の一つであるガス拡散層(GDL)およびマイクロポーラス層(MPL)に着目し、燃料電池の反応で生成される液水の凍結挙動とその凍結による機械的衝撃がGDLに及ぼす特性について調査した。GDLは一般的に直径8 μm程度のカーボン繊維からなる微細な多孔体であるため、実際の発電状態において、十分な時間および空間分解能を有して、内部の構造や含水時における微視的な液水分布および液水挙動を可視化することは一般的に難しい。また、GDLに付加したMPL基材はサブミクロンオーダーであり、凍結による機械的損傷を受けやすい可能性があるが、詳細な状況はこれまで分かっていない。本研究では、含水状態のGDL単体およびMPLを付加したGDLを用いて氷点下環境でのGDL内部の液水挙動と固-液相変化現象のex-situ実験を大型放射光施設SPring-8でX線マイクロCTを行い評価した。