抄録
Eu添加GaNによる赤色発光ダイオードの高輝度化を目的として、高濃度Eu添加とEuイオン周辺局所構造の制御技術の確立を目指している。これまでに、酸素を共添加することで、Eu添加GaNの発光ピーク強度が増大し、X線吸収微細構造(XAFS)測定においてスペクトルの変化も観察された。ところが、二次イオン質量分析により酸素濃度とEu濃度を比較したところ、添加された酸素濃度はEuに対して数%程度であったことから、XAFS測定にて観察された構造変化をEuと酸素の複合体の形成だけでは説明できないことが分かった。新たなモデルとして、酸素がドナーとして働くことにより導入される欠陥の濃度が変化することで、励起されやすいEuイオン周辺局所構造が形成されることが考えられた。そこで、GaN中でドナーとなるSiを導入し、酸素共添加と同様な発光スペクトルの変化とEuイオン周辺局所構造の変化が生じるのかを調べた。X線吸収端近傍構造(XANES)測定の結果、これまでのEu原料(Eu(DPM)3)を用いて作製したEu添加GaNと似たスペクトルが現れた。Si原料であるモノメチルシラン(MMSi)流量を一定として、Eu濃度に対する依存性の評価においても、差はほとんど生じないことが分かった。