抄録
磁気コンプトン散乱を用いると、化合物のスピン磁気モーメントのみを抽出し、定量することができる。そこで、スピン磁気モーメントしか有しない GdN の磁気コンプトン散乱を取得し、スピン磁気モーメントを定量評価した。第一原理計算が予想するとおり、Gd の 4f 軌道は Gd-5d と N-2p と混成し、その結果 Gd-4f だけでなく、Gd-5d と N-2p もスピン磁気モーメントを有することが分かった。また、Gd-5d と N-2p のスピン磁気モーメントの大きさはほぼ同程度であり、その向きは逆向きであることから、全体では Gd-4f のみが主に磁性を担っているように振る舞う。