SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
9 巻, 1 号
SPring-8 Document D2021-003
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
Section A
Section B
  • 岸本 浩通, 松本 典大, 間下 亮, 増井 友美
    2021 年 9 巻 1 号 p. 68-71
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     ゴムの硫黄加硫の促進助剤として、酸化亜鉛(ZnO)が用いられる。ZnO は加硫過程における熱により配合された加硫促進剤などと反応することで種々の亜鉛化合物に変化し、加硫反応や架橋構造形成に関係していると考えられてきた。しかし、その加硫過程における ZnO の反応機構や拡散については未だ良く分かっていない。今回、ZnO および亜鉛化合物の反応生成物とその拡散について XAFS-SAXS 逐次計測により調査することを目的に実験を行った。XAFS-SAXS 逐次計測の技術を検討した結果、加硫反応前の XAFS および SAXS データがこれまで別々に測定してきたデータと同等という妥当な結果が得られ、本技術は確立できたと判断した。しかし、ZnO から StZn や ZnMBT への変化量が少なく ZnO の非常に大きな散乱強度にこれら化合物の散乱強度が埋もれているため、亜鉛化合物の拡散過程の情報を得ることは困難であった。
  • 木村 正雄, 冨田 美穂, 稲熊 徹, 佐藤 眞直
    2021 年 9 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     強圧下した純鉄を加熱した際に生じる再結晶過程を迅速・簡便に観察するために、白色X線ビームによる薄板試料中の結晶粒2次元マッピングについて検討した。しかし、想定より粗大粒のサイズ・比率が小さく、二次元内のどの位置においても多くの結晶粒からのラウエパターンが観察され、単純にその差分評価では、結晶粒マッピングを行うことができなかった。今後は、(a)粗大粒だけからなるモデル試料での検証、(b)多数結晶粒からのラウエパターンの高速解析、が必要である。
  • 岸本 浩通, 金子 房恵, 間下 亮
    2021 年 9 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     複写機に用いられる導電性発泡ゴムの電気特性を高度にコントロールする技術を開発するために、2つの高分解能位相コントラストX線CT法を用いて、配合されているポリマーの三次元的なモルフォロジー観察が可能であるのか検証した。走査型高分解能微分位相X線CT法を検証したが、長時間測定における試料ドリフトの影響および電子ビームの軌道変動の影響により十分な検証ができなかった。一方、Zernike 型高分解能位相X線CT法により、導電ゴム材料に配合されたポリマーの三次元でのモルフォロジー観察することができた。今後、導電ゴム材料の機能向上および機能メカニズムについて新たな知見が得られることが期待される。
  • 槙 智仁, 古澤 大介, 西内 武司, 竹澤 昌晃
    2021 年 9 巻 1 号 p. 80-82
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     Nd-Fe-B 系焼結磁石において結晶方位と磁区構造の関係を明らかにすることを目的とし、配向方向に平行な面において電子線後方散乱回折(EBSD)と BL25SU の軟X線磁気円二色性(MCD)顕微鏡装置による磁区観察を同位置で行った。熱消磁状態では多くの領域において多磁区粒子となっており、磁区は隣接する粒子をまたがって連続する場合が多いことがわかった。また、観察面に対し平行な磁場中で明瞭な磁区構造変化を得ることに成功した。その結果、粒子の磁化容易方向と印加磁場の角度差が大きい場合には磁壁移動が妨げられる可能性があることを示した。
  • 土井 修一, 安岡 茂和, 石田 潤, 甲斐 拓也, 梶原 剛史, 夘野木 昇平
    2021 年 9 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     ニッケル水素電池の負極として用いられる RE–Mg–Ni–Al (RE: 希土類元素)系の水素吸蔵合金について、電池反応と固気反応における結晶構造の変化を放射光粉末X線回折により調べた。民生用のニッケル水素電池として使用実績のある合金を用いた測定の結果、主相 A2B7(2H) 相の回折ピークに関し、電池の寿命末期に近い 600 サイクル充放電を行った試料と 80℃ での水素ガスによる固気反応5サイクルの試料を比較すると、処理前の合金からのピーク位置の変化量はほぼ同じであったが、ピーク形状が異なることが明らかとなった。電池反応と固気反応では、格子歪みや結晶子サイズの観点で、水素吸蔵・放出の結晶構造への影響が異なると推測される。
  • 尾藤 容正, 間下 亮, 増井 友美, 金子 房恵, 岸本 浩通
    2021 年 9 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では、これまでの解析法だけでは困難であったゴム中に形成された硫黄架橋疎密構造のサイズ情報に加え、架橋疎密構造中の架橋密度について SAXS 法を用いて検討した。その結果、膨潤率を変えて測定した架橋疎密サイズの変化率と体積膨潤率の関係から、これまで分からなかった架橋疎密構造中の架橋密度について解析することが可能となった。
  • 徳田 一弥, 後藤 健吾, 土子 哲, 上村 重明, 飯原 順次
    2021 年 9 巻 1 号 p. 92-95
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     タングステンめっき用の溶融塩浴の1つである Na2WO4-WO3 系に対し、高温におけるタングステンの状態を、X線吸収分光法 (XAFS) で分析した。前回の課題では赤外線イメージ炉を加熱源とした 800°C でのその場測定系を確立したが、めっき温度である 900°C には不足であった。そこで今回は赤外線イメージ炉を2つ使用することで 950°C での測定を達成し、仕込み組成と温度によって浴中のイオン種が変化することを確認した。
  • 土井 修一, 山崎 貴司, 安岡 茂和, 甲斐 拓也, 梶原 剛史, 夘野木 昇平
    2021 年 9 巻 1 号 p. 96-98
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     正極活物質に大気中の酸素を用いる次世代二次電池「水素/空気二次電池」において、ガス拡散電極(空気極)は、酸素を還元・発生させる役割を担うため、水素/空気二次電池の特性に大きな影響を与える。本研究では、放射光を利用した高分解能X線CTを用いて、Bi2Ru2O7 触媒、Ni 粉末及びポリテトラフルオロエチレン (PTFE) で構成される空気極の内部構造の調査を目的として、非破壊観察を試みた。また、実際にX線CT像を取得しながら観察用の試料作製方法を検討した結果、試料をキャピラリーに充填する方法が良いことが分かった。測定の結果、空気極内部に触媒粒子の凝集物や大きな空隙が存在しており、空気極の課題を抽出することができた。
  • 谷田 肇, 岩井 良樹, 高尾 直樹, 松本 匡史, 今井 英人
    2021 年 9 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     車載用リチウムイオン二次電池の高速充放電中の正極材料内のリチウム挿入脱離プロセルのメカニズム解明を目的とし、Time Gating 法による透過XAFS法を適用した。Li(Ni, Mn, Co)O2 を正極とする電池試料に対して、高電位領域の 3.5-3.8 V と 3.9-4.2 V の間の電位ステップ後10秒間に、1秒毎の Mn、Co、Ni の K 吸収端 EXAFS スペクトルを得た。一方、完全に放電する時間が20分の 3C のレートと、12分の 5C のレートで充放電を繰り返す間に、約30秒間隔で Quick Scan 測定したスペクトルについても解析を行った。今回行った充電レートおよび XAFS 観測時間においては、XAFS スペクトルの変化は非常に小さく、リチウムイオン二次電池の電気化学反応は正極粒子の最表面近傍でのみ起きていると考えられる。
  • 北原 周, 横溝 臣智
    2021 年 9 巻 1 号 p. 104-109
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy (HAXPES) は表面から埋もれた界面に存在する金属と樹脂の結合状態を評価する分析手法として期待されるが、絶縁性の高い金属酸化皮膜と樹脂の界面を測定する際、チャージアップに起因する光電子スペクトルのピークシフトが問題となる。本研究では、Si ウエハ上の Al 蒸着膜に樹脂薄膜を成膜し、入射X線の照射条件が測定に与える影響について調査した。X線強度を減衰することで、Al 1s の酸化物成分のチャージアップが軽減できた。一方で、試料作成や測定時期などの条件の違いによって、再現性のある結果が得られなかった。埋もれた界面に存在する金属と樹脂の結合状態を HAXPES 分析する際、実験条件の追加検討が必要であることが分かった。
  • 川村 朋晃, 尾角 英毅, 米山 明男, 山口 聡, 野口 真一, 巽 修平, 後藤 和宏, 福田 一徳, 稲葉 雅之, 高尾 直樹, 本谷 ...
    2021 年 9 巻 1 号 p. 110-114
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     SPring-8 を利用してX線トポグラフィや有機材料の単色X線イメージングを行う場合、大面積ビームを用いることが多い。これに対し SPring-8 の白色X線は分光結晶に対する熱負荷が他の放射光施設よりも大きいため大面積ビームを実現するためには熱負荷に伴う熱歪みを低減する必要がある。また熱歪みは使用する分光結晶の反射面、結晶配置および利用X線エネルギーによっても異なることから各種条件での熱歪みの影響も重要となる。SUNBEAM 輸送部グループではこれまで BL16B2 において分光結晶の熱負荷の影響の系統的な評価および低減のためのスタディを行ってきた。本報告では本課題およびこれまで実施してきたスタディ結果を元に BL16B2 ビームラインにおける分光結晶の熱歪み評価の現状について述べる。
  • 川村 朋晃, 尾角 英毅, 米山 明男, 山口 聡, 野口 真一, 大野 泰孝, 巽 修平, 後藤 和宏, 福田 一徳, 稲葉 雅之, 高尾 ...
    2021 年 9 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2021/01/28
    公開日: 2021/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
     BL16B2 では放射光の単色性を生かしたX線トポグラフや単色X線イメージング実験が行われているが SPring-8 の放射光は他の放射光施設よりも干渉性が良いため、干渉コントラストによりビームイメージ内に強度不均一が生じやすい。そこで SUNBEAM 輸送部グループではそれについての原因解明・改善を進めてきた。本報告では本課題およびこれまでのスタディ結果を元に主にミクロ領域でのビーム強度不均一の検討結果について述べる。
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