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平山 悠介, 中川 貴, 山本 孝夫
2021 年 9 巻 1 号 p.
1-4
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
磁気コンプトン散乱を用いると、化合物のスピン磁気モーメントのみを抽出し、定量することができる。そこで、スピン磁気モーメントしか有しない GdN の磁気コンプトン散乱を取得し、スピン磁気モーメントを定量評価した。第一原理計算が予想するとおり、Gd の 4
f 軌道は Gd-5
d と N-2
p と混成し、その結果 Gd-4
f だけでなく、Gd-5
d と N-2
p もスピン磁気モーメントを有することが分かった。また、Gd-5
d と N-2
p のスピン磁気モーメントの大きさはほぼ同程度であり、その向きは逆向きであることから、全体では Gd-4
f のみが主に磁性を担っているように振る舞う。
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中本 有紀, 坂田 雅文, 清水 克哉, 平尾 直久
2021 年 9 巻 1 号 p.
5-7
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ストロンチウムについて異なる実験パスでの高圧・低温下のX線回折測定から、高圧相の温度―圧力相図を求めた。圧力を印加することで超伝導転移温度が上昇する特徴で知られるアルカリ土類金属元素であるストロンチウムの結晶構造とその超伝導転移温度の関係を明らかにした。
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中本 有紀, 坂田 雅文, 清水 克哉, 平尾 直久
2021 年 9 巻 1 号 p.
8-10
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ハロゲン元素である臭素について高圧力下での構造相転移を見出した。同族元素のヨウ素と同様に臭素が二原子分子から圧力により分子解離することは既に報告されている.本研究ではヨウ素ですでに報告のある複雑な非整合変調構造相が臭素でも示唆される結果をX線回折実験により得た。さらに新しい高圧相の存在も見出した。
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清水 健二, 柏原 輝彦, 為則 雄祐
2021 年 9 巻 1 号 p.
11-15
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
BL27SUにおいて微小領域の硫黄化学形態を効率よく見積もる手法を確立した。4つの蛍光板を分析試料に埋め込み、蛍光板と分析点の位置関係を予め記録し、分析開始時に測定ステージの座標系に変換することで、目的の分析点に数十 µm の精度で移動できるようになった。メルト包有物のような20 µm 程度の分析対象物からは本来天然では存在しない S
4+ が検出された。同一点の繰り返し分析により、S
2- 量は一定のまま S
6+ 量が減少し S
4+ 量が増加することが観察され、本来の S
6+/S
2- 比は測定値の(S
6++S
4+)/S
2- であることが分かった。
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新田 清文, 関澤 央輝, 石黒 志, 鈴木 基寛, 河村 直己, 水牧 仁一朗, 唯 美津木, 宇留賀 朋哉
2021 年 9 巻 1 号 p.
16-18
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
現在の光学素子を用いた空間分解 XAFS による空間分解能はおよそ 100 nm 程度であり、より高い空間分解 XAFS 計測が必要とされている。今回我々はコヒーレント回折イメージング法を応用した空間分解 XAFS 計測法を構築し、触媒試料に対する空間分解 XAFS 計測を初めて試みた。本報告では実際の計測で得られた結果と今後の課題について報告する。
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高野 秀和, 辻 卓也, 篭島 靖
2021 年 9 巻 1 号 p.
19-21
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
平面基板上に描画した反射ゾーンパターンで構成される全反射ゾーンプレート(Total reflection zone plate: TRZP)は、斜入射条件で使用することで、X線を一次元集光する集光素子である。他の硬X線集光素子と比べて作製が比較的容易で、10 nm を下回るサイズの集光が原理的に可能であることが大きな特徴である。本実験では、10 keV の単色X線を用い、二枚の線集光 TRZP をタンデム直交配置して、縦横の集光を独立に行うことにより点集光の生成を行った。暗視野ナイフエッジ走査法による集光サイズ評価の結果、縦 58 nm、横45 nm の半値幅の集光が得られた。
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宮部 俊宏, 小園 裕子, 笠寺 浩介, 松宮 陽, 関口 博史, 沖本 憲明, 泰地 真久人, 佐々木 裕次, 小園 晴生
2021 年 9 巻 1 号 p.
22-25
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
HLA-DM(DM)は組織適合性抗原クラス II(MHC II)のペプチド交換反応の触媒分子である。その反応は、内在性のペプチドと外来性の抗原ペプチドを置き換えるというものである。その中間過程において MHC II はペプチドを緩く結合した構造をとりうることが想定されている。本研究ではX線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking: DXT)と分子動力学計算(MD)により、DM の存在下で MHC II にペプチドが緩く結合している状態を世界で初めて検出した。
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鈴木 基寛, 河村 直己, 近藤 祐治
2021 年 9 巻 1 号 p.
26-31
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ナノビームX線を用いたX線回折測定により、CoPt 合金膜で作製した磁気ドットの構造解析を行った。ドットの直径は 50 nm〜300 nm、膜厚は 15 nm であり、次世代磁気記録媒体であるビットパターン素子の特性評価を目的とした。256個のドットを格子状に配列した試料に対して測定を行い、単一ドットの XRD プロファイルの特徴を統計的に解析した。その結果、格子定数および c 軸配向性のドット直径に対する依存性を明らかにした。XMCD イメージングの結果と比較することで、磁気ドットの結晶配向性はビットパターン媒体の性能指標である反転磁界分散の主要な原因ではないことが示唆された。
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内山 裕士, 寺崎 一郎
2021 年 9 巻 1 号 p.
32-35
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
モット絶縁体 Ca
2RuO
4 単結晶を用いて、そのX線非弾性散乱によりフォノン励起を精密に調べることにより、弾性率テンソルのすべての要素を決定し、その温度変化を捉えることに成功した。いくつかの弾性定数は温度によりその値が変化しており、本系の強い電子格子相互作用、スピン格子相互作用を示唆している。
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松井 康人, 長野 有希子, 長屋 太樹, 加藤 伸之, 塩田 憲司, 米田 稔
2021 年 9 巻 1 号 p.
36-39
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ステンレスの溶接現場において、発がん性を有する六価クロムの発生が報告されている。しかしながら、溶接ヒューム中のクロムの組成(六価クロムと三価クロムの割合)を、溶接の条件に応じて定量的に評価した報告は少ない。そこで本研究では、TIG溶接および被覆アーク溶接ヒュームを粒径毎に捕集し、全クロム中六価クロム含有率を、粒径毎に評価することとした。放射光を用いた Cr K 端 XANES スペクトルを取得し六価クロムに特徴的なプレエッジピークを解析することにより、溶接ヒューム粒径毎における全クロム中六価クロム含有率を求めた。その結果、TIG 溶接ヒュームではいずれの粒径においても六価クロムは検出されなかった。被覆アーク溶接ヒュームでは多くの粒径で六価クロムが検出され、0.25~4.3 μm の粒径範囲においては全クロム中六価クロム含有率が約 68% と、他の粒径における含有率の数倍であった。
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内田 欣吾, 松本 宏紀, 西村 裕行, 川原 直樹, 北川 剛史, 真田 ひかる, 中村 啓人, 太田 昇, 清水 洋
2021 年 9 巻 1 号 p.
40-44
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
棒状と円盤状にコンフォメーションを変える分子の液晶相の同定を行った。末端アルキル側鎖の炭素鎖が12のエーテル誘導体は、3つの液晶相を示し、最高温相は SmA 相、中間の液晶相は高次のスメクチック相の一つである SmI 相であることが示唆される結果を得た。均一配向液晶ドメインが微細になりがちな高次配向秩序相や高温領域で発現する液晶相の同定はSPring-8での測定が有利である。
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松野 丈夫, 大内 祐貴, 鈴木 基寛, 小塚 裕介, 打田 正輝, 有馬 孝尚, 十倉 好紀, 川崎 雅司
2021 年 9 巻 1 号 p.
45-47
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
強いスピン-軌道相互作用を持つ金属と強磁性体との界面がスピントロニクスの舞台として注目を集めている。本研究では強磁性金属 SrRuO
3 と非磁性体金属 SrIrO
3 とのエピタキシャル界面における磁気近接効果を Ir
L 吸収端でのX線磁気円二色性(XMCD)により測定した。SrIrO
3 に誘起されたモーメントは SrRuO
3 と逆向きで 0.02 µ
B/Ir と非常に小さく、軌道磁気モーメントの寄与が大きいことが明らかとなった。
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西川 幸志
2021 年 9 巻 1 号 p.
48-51
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
[NiFe] ヒドロゲナーゼは一般的に酸素によって失活するが、近年、酸素に対して耐性を持つものが見つかってきている。これまで [NiFe] ヒドロゲナーゼの酸素に対する反応性の違いは、鉄硫黄クラスターの構造変化の違いにのみ注目して説明されることがほとんどであったが、
DvMF 由来の標準型 [NiFe] ヒドロゲナーゼに関して、酵素が酸素に曝された際に、活性部位を構成する Ni 原子の占有率が低下することが報告された。本研究では、酸素と反応した際の [NiFe] ヒドロゲナーゼの活性部位での構造変化についてさらに詳しく調べることを目指しているが、その過程で還元型について高分解能での構造解析に成功したので報告する。
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墨 岳夫, 野尻 正樹
2021 年 9 巻 1 号 p.
52-55
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
近年、生物が利用する新たな金属の例として周期表第6周期3族の希土類金属元素(ランタニド)イオンを持つ新種のアルコール脱水素酵素が見つかっている。本研究では、C1資化性脱窒菌
Hyphomicrobium denitrificans が持つ新奇なランタニド含有アルコール脱水素酵素(Hd-XoxF)と本酵素反応における電子伝達について着目し、その生理的電子受容体シトクロム
c553(Hd-XoxG)の結晶化と予備的X線回折実験を行った。
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石井 賢司, 浅野 駿, 芦田 万純, 藤田 全基, 脇本 秀一, 足立 匡, 川股 隆行, 小池 洋二, 宮脇 淳, 原田 慈久, 水木 ...
2021 年 9 巻 1 号 p.
56-59
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ホールドープ型銅酸化物超伝導体の過剰ドープ領域における電荷秩序を探索するため、La
2-xSr
xCuO
4 (x = 0.250, 0.204) の酸素 K 吸収端共鳴非弾性X線散乱実験を行った。CuO
2 面内の a 軸方向の波数
q = (h,0)、|h| ≤ 0.245 では、測定精度の範囲では電荷秩序に対応する弾性散乱強度の増大は観測されなかった。今後の課題として、Cu サイトを置換した物質の測定とブラッグ反射を利用した結晶方位精度の向上について言及する。
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森 貴洋, 岡田 直也, 志岐 成友
2021 年 9 巻 1 号 p.
60-63
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
シリコントンネルトランジスタのオン電流を増大させる方法として、Al-N 複合不純物による等電子トラップを PN 接合中に導入する技術がある。理論的には Al と N とがペアになる局所構造が予言されているが、実験的には明らかではない。そこで本実験では Si 中の Al の局所構造をエックス線吸収微細構造(XAFS)測定によってその確認を試みた。Al に由来する XANES スペクトルが得られたが、局所構造解析のためにはより高濃度の Al-N 複合不純物の導入が必要である。
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松村 武, 道村 真司, 稲見 俊哉, 井村 敬一郎, 坂本 和司, 横田 晋次郎, 佐藤 憲昭
2021 年 9 巻 1 号 p.
64-67
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
非磁性絶縁体 SmS は約 0.6 GPa の圧力で 5d バンドと 4f 準位間のギャップがつぶれて金属へと転移し、2 GPa 以上で転移温度 20K の磁気秩序相が出現する。しかし、磁気秩序の波数ベクトルなどの基本的知見は全く未解明であり、観測が望まれていた。本研究で共鳴X線回折による磁気秩序の観測を試みたが、1次相転移に伴って結晶のモザイク性が劣化し,そのために強度が失われて観測には至らなかった。
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岸本 浩通, 松本 典大, 間下 亮, 増井 友美
2021 年 9 巻 1 号 p.
68-71
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ゴムの硫黄加硫の促進助剤として、酸化亜鉛(ZnO)が用いられる。ZnO は加硫過程における熱により配合された加硫促進剤などと反応することで種々の亜鉛化合物に変化し、加硫反応や架橋構造形成に関係していると考えられてきた。しかし、その加硫過程における ZnO の反応機構や拡散については未だ良く分かっていない。今回、ZnO および亜鉛化合物の反応生成物とその拡散について XAFS-SAXS 逐次計測により調査することを目的に実験を行った。XAFS-SAXS 逐次計測の技術を検討した結果、加硫反応前の XAFS および SAXS データがこれまで別々に測定してきたデータと同等という妥当な結果が得られ、本技術は確立できたと判断した。しかし、ZnO から StZn や ZnMBT への変化量が少なく ZnO の非常に大きな散乱強度にこれら化合物の散乱強度が埋もれているため、亜鉛化合物の拡散過程の情報を得ることは困難であった。
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木村 正雄, 冨田 美穂, 稲熊 徹, 佐藤 眞直
2021 年 9 巻 1 号 p.
72-75
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
強圧下した純鉄を加熱した際に生じる再結晶過程を迅速・簡便に観察するために、白色X線ビームによる薄板試料中の結晶粒2次元マッピングについて検討した。しかし、想定より粗大粒のサイズ・比率が小さく、二次元内のどの位置においても多くの結晶粒からのラウエパターンが観察され、単純にその差分評価では、結晶粒マッピングを行うことができなかった。今後は、(a)粗大粒だけからなるモデル試料での検証、(b)多数結晶粒からのラウエパターンの高速解析、が必要である。
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岸本 浩通, 金子 房恵, 間下 亮
2021 年 9 巻 1 号 p.
76-79
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
複写機に用いられる導電性発泡ゴムの電気特性を高度にコントロールする技術を開発するために、2つの高分解能位相コントラストX線CT法を用いて、配合されているポリマーの三次元的なモルフォロジー観察が可能であるのか検証した。走査型高分解能微分位相X線CT法を検証したが、長時間測定における試料ドリフトの影響および電子ビームの軌道変動の影響により十分な検証ができなかった。一方、Zernike 型高分解能位相X線CT法により、導電ゴム材料に配合されたポリマーの三次元でのモルフォロジー観察することができた。今後、導電ゴム材料の機能向上および機能メカニズムについて新たな知見が得られることが期待される。
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槙 智仁, 古澤 大介, 西内 武司, 竹澤 昌晃
2021 年 9 巻 1 号 p.
80-82
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
Nd-Fe-B 系焼結磁石において結晶方位と磁区構造の関係を明らかにすることを目的とし、配向方向に平行な面において電子線後方散乱回折(EBSD)と BL25SU の軟X線磁気円二色性(MCD)顕微鏡装置による磁区観察を同位置で行った。熱消磁状態では多くの領域において多磁区粒子となっており、磁区は隣接する粒子をまたがって連続する場合が多いことがわかった。また、観察面に対し平行な磁場中で明瞭な磁区構造変化を得ることに成功した。その結果、粒子の磁化容易方向と印加磁場の角度差が大きい場合には磁壁移動が妨げられる可能性があることを示した。
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土井 修一, 安岡 茂和, 石田 潤, 甲斐 拓也, 梶原 剛史, 夘野木 昇平
2021 年 9 巻 1 号 p.
83-87
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ニッケル水素電池の負極として用いられる RE–Mg–Ni–Al (RE: 希土類元素)系の水素吸蔵合金について、電池反応と固気反応における結晶構造の変化を放射光粉末X線回折により調べた。民生用のニッケル水素電池として使用実績のある合金を用いた測定の結果、主相 A
2B
7(2H) 相の回折ピークに関し、電池の寿命末期に近い 600 サイクル充放電を行った試料と 80℃ での水素ガスによる固気反応5サイクルの試料を比較すると、処理前の合金からのピーク位置の変化量はほぼ同じであったが、ピーク形状が異なることが明らかとなった。電池反応と固気反応では、格子歪みや結晶子サイズの観点で、水素吸蔵・放出の結晶構造への影響が異なると推測される。
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尾藤 容正, 間下 亮, 増井 友美, 金子 房恵, 岸本 浩通
2021 年 9 巻 1 号 p.
88-91
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では、これまでの解析法だけでは困難であったゴム中に形成された硫黄架橋疎密構造のサイズ情報に加え、架橋疎密構造中の架橋密度について SAXS 法を用いて検討した。その結果、膨潤率を変えて測定した架橋疎密サイズの変化率と体積膨潤率の関係から、これまで分からなかった架橋疎密構造中の架橋密度について解析することが可能となった。
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徳田 一弥, 後藤 健吾, 土子 哲, 上村 重明, 飯原 順次
2021 年 9 巻 1 号 p.
92-95
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
タングステンめっき用の溶融塩浴の1つである Na
2WO
4-WO
3 系に対し、高温におけるタングステンの状態を、X線吸収分光法 (XAFS) で分析した。前回の課題では赤外線イメージ炉を加熱源とした 800°C でのその場測定系を確立したが、めっき温度である 900°C には不足であった。そこで今回は赤外線イメージ炉を2つ使用することで 950°C での測定を達成し、仕込み組成と温度によって浴中のイオン種が変化することを確認した。
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土井 修一, 山崎 貴司, 安岡 茂和, 甲斐 拓也, 梶原 剛史, 夘野木 昇平
2021 年 9 巻 1 号 p.
96-98
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
正極活物質に大気中の酸素を用いる次世代二次電池「水素/空気二次電池」において、ガス拡散電極(空気極)は、酸素を還元・発生させる役割を担うため、水素/空気二次電池の特性に大きな影響を与える。本研究では、放射光を利用した高分解能X線CTを用いて、Bi
2Ru
2O
7 触媒、Ni 粉末及びポリテトラフルオロエチレン (PTFE) で構成される空気極の内部構造の調査を目的として、非破壊観察を試みた。また、実際にX線CT像を取得しながら観察用の試料作製方法を検討した結果、試料をキャピラリーに充填する方法が良いことが分かった。測定の結果、空気極内部に触媒粒子の凝集物や大きな空隙が存在しており、空気極の課題を抽出することができた。
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谷田 肇, 岩井 良樹, 高尾 直樹, 松本 匡史, 今井 英人
2021 年 9 巻 1 号 p.
99-103
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
車載用リチウムイオン二次電池の高速充放電中の正極材料内のリチウム挿入脱離プロセルのメカニズム解明を目的とし、Time Gating 法による透過XAFS法を適用した。Li(Ni, Mn, Co)O
2 を正極とする電池試料に対して、高電位領域の 3.5-3.8 V と 3.9-4.2 V の間の電位ステップ後10秒間に、1秒毎の Mn、Co、Ni の K 吸収端 EXAFS スペクトルを得た。一方、完全に放電する時間が20分の 3C のレートと、12分の 5C のレートで充放電を繰り返す間に、約30秒間隔で Quick Scan 測定したスペクトルについても解析を行った。今回行った充電レートおよび XAFS 観測時間においては、XAFS スペクトルの変化は非常に小さく、リチウムイオン二次電池の電気化学反応は正極粒子の最表面近傍でのみ起きていると考えられる。
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北原 周, 横溝 臣智
2021 年 9 巻 1 号 p.
104-109
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy (HAXPES) は表面から埋もれた界面に存在する金属と樹脂の結合状態を評価する分析手法として期待されるが、絶縁性の高い金属酸化皮膜と樹脂の界面を測定する際、チャージアップに起因する光電子スペクトルのピークシフトが問題となる。本研究では、Si ウエハ上の Al 蒸着膜に樹脂薄膜を成膜し、入射X線の照射条件が測定に与える影響について調査した。X線強度を減衰することで、Al 1s の酸化物成分のチャージアップが軽減できた。一方で、試料作成や測定時期などの条件の違いによって、再現性のある結果が得られなかった。埋もれた界面に存在する金属と樹脂の結合状態を HAXPES 分析する際、実験条件の追加検討が必要であることが分かった。
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川村 朋晃, 尾角 英毅, 米山 明男, 山口 聡, 野口 真一, 巽 修平, 後藤 和宏, 福田 一徳, 稲葉 雅之, 高尾 直樹, 本谷 ...
2021 年 9 巻 1 号 p.
110-114
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
SPring-8 を利用してX線トポグラフィや有機材料の単色X線イメージングを行う場合、大面積ビームを用いることが多い。これに対し SPring-8 の白色X線は分光結晶に対する熱負荷が他の放射光施設よりも大きいため大面積ビームを実現するためには熱負荷に伴う熱歪みを低減する必要がある。また熱歪みは使用する分光結晶の反射面、結晶配置および利用X線エネルギーによっても異なることから各種条件での熱歪みの影響も重要となる。SUNBEAM 輸送部グループではこれまで BL16B2 において分光結晶の熱負荷の影響の系統的な評価および低減のためのスタディを行ってきた。本報告では本課題およびこれまで実施してきたスタディ結果を元に BL16B2 ビームラインにおける分光結晶の熱歪み評価の現状について述べる。
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川村 朋晃, 尾角 英毅, 米山 明男, 山口 聡, 野口 真一, 大野 泰孝, 巽 修平, 後藤 和宏, 福田 一徳, 稲葉 雅之, 高尾 ...
2021 年 9 巻 1 号 p.
115-119
発行日: 2021/01/28
公開日: 2021/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
BL16B2 では放射光の単色性を生かしたX線トポグラフや単色X線イメージング実験が行われているが SPring-8 の放射光は他の放射光施設よりも干渉性が良いため、干渉コントラストによりビームイメージ内に強度不均一が生じやすい。そこで SUNBEAM 輸送部グループではそれについての原因解明・改善を進めてきた。本報告では本課題およびこれまでのスタディ結果を元に主にミクロ領域でのビーム強度不均一の検討結果について述べる。
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