抄録
Fe2+ と Fe3+ が共存する混合原子価化合物 LuFe2O4 は、電荷秩序を起源とする電気分極と自発磁化を合わせ持つマルチフェロイック物質である[1]。磁気秩序温度 (約 250 K) 以下では 10 T に及ぶ巨大な磁気ヒステリシスが観測され、誘電性が保磁力に与える影響に興味が持たれている。本研究では軟X線磁気円二色性測定を行い、最大 29 T の磁場反転に対して非対称な磁気円二色性スペクトルを観測した。この結果は、ドメイン境界に磁化反転を抑制する固着した磁気構造の存在を示している。