2022 年 12 巻 p. 23-30
細胞診検査では検体の処理開始まで細胞変性をできるだけ阻止すべく検体採取後の標本作製を迅速に行うことが推奨されている。しかし、臨床の現場ではすべての検体搬送を迅速に行うことは難しく、検体処理までに一定の時間経過を見込まなくてはいけない。そこで本研究では、ブタ肝細胞を用い、リン酸緩衝液を浮遊液とした人工液状検体を作製し、浸透圧、pH、時間、温度、アルブミン添加などによる影響を形態学的に観察した。浸透圧では0.1mol/Lで最も変性が少なく、pH(6.0~7.6)による影響はほとんどみられなかった。4℃では1時間まで変性はなく、5%アルブミン添加では、4℃で4時間まで変性所見はみられなかった。検査室への検体到着後、すぐに処理が開始できない場合、冷蔵保存し、可能であれば5%程度にアルブミンを添加すると細胞変性を最小限に抑えられる可能性が示唆された。