社会情報学
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行政手続法への社会情報学的アプローチ(<特集>社会情報学からの発信)
岡田 安功
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2012 年 1 巻 1 号 p. 65-72

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抄録

本稿は行政手続法を素材にして社会情報という概念を用いて社会情報学と法律学の融合の可能性を描写する。法制度は典型的な社会情報の体系であり,憲法が創出した行政権の行使に関わる行政手続法もまた社会情報の体系である。行政手続法は,国家と国民が行政に関する社会情報を互いに提供しあって共有することにより,行政権の恣意的な行使を抑制している。行政処分に際して,行政庁が審査基準を国民に示し,聴聞や弁明の機会を国民に与えるのは,行政に関する社会情報を行政庁と国民が共有することによって,不適切な行政権の行使が行われるリスクを軽減するためである。行政手続法が定める行政指導の方式規制やパブリックコメントも行政庁と国民が行政に関する社会情報を共有するための制度である。国家は国民によって創設されたが国民とゲームをするようになる。このゲームに勝者を出してはいけないので,両者のもつ社会情報について「情報の非対称性」を解消するために行政手続法が必要である。土地区画整理事業計画の決定は長い月日をかけて行われるが,これを包括的に規制する規定が行政手続法には存在しない。しかし,この計画決定には行政庁と地域住民が計画決定に必要な社会情報を互いに提供して共有する必要があり,これは広義の行政手続法の課題である。土地区画整理事業計画の決定に関する最高裁判所の判例変更を検討すると,計画決定において行政庁と国民が行政に関する社会情報を共有して熟議をするための行政手続法の必要性が明らかになる。

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© 2012 一般社団法人 社会情報学会
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