社会情報学
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原著論文
  • 山中 惇史
    2025 年 13 巻 3 号 p. 1-16
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,自己申告尺度によって測られるスマートフォンへの依存傾向が,スマートフォンに関する主観的利用認識と実際の利用ログデータのどちらによって説明されるのかを分析することを通して,それが何を反映した指標であるのかを明らかにすることである。

    本研究では,事前に許諾を得たAndroidスマートフォン利用者602名の参加者の5ヶ月間のアプリ起動に関する利用ログデータと主要アプリの利用に関する認識を訊ねたアンケート調査を組み合わせ,自己申告尺度によって測られるスマートフォンへの依存傾向に関して構造方程式モデリング(SEM)適用することで分析を行なった。結果として,利用ログデータから得られた実際の主要なアプリの起動回数はスマートフォンへの依存傾向とほとんど関連しなかった一方で,それらのアプリ利用に関する自己認識は有意に関連していた。ただし,週ごとのスマートフォン利用パターンが恒常的にかなり高い集団は,それが低い集団に比べて有意に依存傾向が高いことも示された。

    以上の結果から,自己申告尺度によって測られるスマートフォンへの依存傾向は,基本的には主観的利用認識を反映する変数であり,起動に関する利用ログデータから単純に導かれる過度な利用とは異なる側面を捉えた指標である可能性を提示した。

  • 長澤 直子
    2025 年 13 巻 3 号 p. 17-32
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/24
    ジャーナル フリー

    本稿では,日本語ワープロが誕生してから5年後までの時期(1979年~1983年)に開発された入力装置(現存しないものを含む)に着目し,かな漢字変換方式(キーボード)と直接採字方式(漢字タブレット)の2つの方式から前者へほぼ統一されていった歴史を文献調査によって描いた。その上で,かな漢字変換を利用するハードウェアに枝分かれが生じた後に一つの方式へとまとまっていった流れを確認し,利用者の技能レベルに応じて使い易さや使いにくさ,および入力の際の「能率」に多様性が存在したことを明らかにした。キーボードを使う場合,欧字圏ではタッチタイピングの技能が多くの人に行き渡っているが,日本ではそうではないことから,手元を見ながら操作する傾向が強い。その場合,使い手が重視するのは文字を探しやすいことで,その指標となったのは五十音の知識であった。「能率」の究極のかたちがタッチタイピングであるとすれば,その技能を有しない人が「能率」を上げる方法は五十音の知識を用いて少しでも速く文字を探すこととなる。このことから,かな入力と比較して使用字数が少なく母音と子音に分けて記憶できるローマ字入力が選ばれることとなっていった。そして,1980年代当時の利用者のワープロ利用の経験は,後のモバイルメディアでの文字入力へスムーズに推移することにつながった。

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