証券市場の効率性を確保するには, 決算発表を早期に実施するだけでなく, 決算発表日の集中を回避して, その分散が図られることが必要である。そこで, 本稿では, 決算発表日の分散に寄与する内部統制システムに係る企業特性を実証的に解明している。
まず, 企業の情報開示を分析視点として位置付けて, 計量テキスト分析を用いて, 会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針についての具体的な開示内容を分析している。これにより, 内部統制システムの構築に対する企業の目に見えない認知を可視化して, 内部統制システムの構築に際して企業が財務報告を重視しているのかどうかを識別している。そして, 企業の財務報告志向が表象されている言及が基本方針の中で「いつから」出現するようになったのかに着目することで, 他社の基本方針についての開示動向などの影響を受け得たことを明示的に考慮して, 企業の財務報告志向を定量化している。また, 複数の異なる定量化の方法を用いることで, 企業の財務報告志向の定量化の頑健性を確保している。
次に, 企業の情報開示を分析対象として位置付けて, 内部統制システムの構築に際して企業が財務報告を重視していることが決算発表日の分散に寄与するのかどうかを実証的に解明している。そして, 企業が財務報告を重視しているほど, 同じ日に決算発表を行う企業がより少ない日に決算発表を行うことを示している。また, 企業が財務報告を重視しているほど, 決算発表が最も集中する日を避けて決算発表を行うことを示している。
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