社会情報学
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原著論文
  • 加藤 大樹
    2025 年14 巻2 号 p. 1-16
    発行日: 2025/12/31
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー

    本稿では, ネット右派がその主要な仮想敵である「リベラル/サヨク」に関してどのようなコミュニケーションをしているのかを明らかにするために, 右派YouTubeチャンネルのコメント1,200件を解釈しながら分析・分類した。先行研究では, インターネット上における「リベラル/サヨク」批判の源流を探るために, 日本におけるアンチ「リベラル/サヨク」的な思想の成り立ちについて研究されてきた。その一方で, 現在のネット右派現象は思想や理念に駆動されているというよりも, 他者と接続することに動機づけられており, 既存のアプローチだけでは不十分であるということも示唆されている。そこで本稿は, 「リベラル/サヨク」批判の現場で生じているコミュニケーションのあり方に焦点を当て, そのパターンを帰納的に明らかにすることを試みた。

    分析の結果, 「リベラル/サヨク」への言及が多い右派YouTubコメント欄では, 敵手や自分たちに付与されるカテゴリについて議論する[カテゴリの調整], 敵手と自分たちの間の勢力争いについて論じる[闘争の生成], 右派への批判に対して主に反論を展開する[批判の転覆]という, 大きく3つの方向性のコミュニケーションが生じていた。また, これらのコミュニケーションでは拡散的な意見交換と収束的な意見交換が発生しており, こうしたタイプの異なるやりとりが生起することでネット右派の持続的な集団形成が可能になっているという示唆が得られた。

  • 久保田 彩乃
    2025 年14 巻2 号 p. 17-33
    発行日: 2025/12/31
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 福島の“3.11からの復興”の文脈で多用されてきたつながりの言説, すなわち誰がどのようにそれを語り, その価値をどのように捉えているのかを明らかにし, そのイデオロギー性について考察することである。Faircloughの「批判的言説分析」から「前提のタイプの分析」を用い, 福島県紙『福島民報』の10年間の3.11に関する記事を「①市民」「②国・行政関係者」「③メディア」の語り手ごとに分析した。

    その結果, ①にとってつながりは地域社会での命とQOLを保障し, 多様な人や物との新たな価値を創造する力であること, ②にとっては避難者の避難元地域への“ふるさと”意識を維持し, 復興や風評払拭に寄与する人々との結びつきであること, ③にとっては復興や風評払拭に貢献する信頼関係に基づく人々との関係性構築であり, 自らもその一員でありたいという福島のメディア特有の指向も明らかとなった。

    分析結果から, “3.11からの復興”におけるつながり言説のイデオロギー性は3点指摘される。第一に, 市民は現実的課題に向き合い多様なつながりを求めるが, 国・行政は共助や郷土愛を美化し地域コミュニティ内部の連帯を強調する。第二に, 復興政策はつながりの目的を限定的にし, その理想像がメディアによって表象される。第三に, メディア自身が地域復興を目的とした県民との連帯的なつながりを重視することで, メディアの独立性・批判性が損なわれ, 国・行政が推進する復興政策に同意・共感する人々と周縁化する人々という二項対立的構図が生み出される可能性が示唆された。

  • 三浦 將太
    2025 年14 巻2 号 p. 35-50
    発行日: 2025/12/31
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究は, スマートフォン利用時間の増加により学業成績が悪化すると示唆する先行研究に対し, 利用時間と学業成績は直接的に関連するのか, それとも特定の利用行動や心的傾向を介して学業成績と関連するのかを明らかにすることを目的とした。千葉県の私立高校1・2年生 (n=549) が調査協力者であり, 未回答等による欠損値を除いたデータ (n=347) を最終的に分析に利用した。スマートフォン, X (旧Twitter), Instagram, Facebook, TikTok等のSNS, そしてLINEそれぞれの利用時間を, 実際の利用ログデータから確認・回答を求め, 分析に利用した。そのほか, スマートフォン依存傾向や同時利用傾向等, その他の利用行動の回答を求めた。学業成績は先行研究の多くが採用する自己申告成績ではなく, 実力テスト (国数英) の得点の確認・回答を求め, 分析に利用した。

    分析の結果, スマートフォンおよびSNSの利用時間と学業成績の間に非常に弱い有意な負の相関が確認されたが, LINE利用時間との間には有意な相関は見られなかった。次にパス解析をしたところ, 各利用時間と学業成績の間に直接的な有意なパスは見られなかった。各利用時間はスマートフォン依存傾向を介し, 学業成績と間接的に負に関連していた。同時利用傾向も学業成績と直接的な有意なパスは確認されず, 学習時間を介して学業成績と間接的に負に関連していた。そのほか, 学習時のスマートフォン配置場所は同時利用傾向に対して有意な負のパスが見られ, セルフコントロールはスマートフォン依存傾向に対して有意な負のパスが確認された。本研究により, スマートフォン利用時間をはじめ, SNS利用時間やLINE利用時間は直接的に学業成績と関連しない可能性が示唆された。また, 同時利用傾向やスマートフォン依存傾向など特定の利用行動や心的傾向を介し, 学業成績と間接的に負に関連する可能性が示された。

  • 葛西 翔
    2025 年14 巻2 号 p. 51-66
    発行日: 2025/12/31
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 今日のスマートシティへと至る情報技術を援用した都市計画を, その基底にあるサイバネティクスの観点から検討することである。スマートシティは今日の都市計画において趨勢を成している。その取り組みの本質には, サイバネティクスとコンピュータによる制御社会の具現化がある。サイバネティクスがもたらす人・社会を対象として含みこむ制御は, 都市に倫理的な議論の必要性を惹起する。しかしながら, 現状のスマートシティ開発においては, 都市へコンピュータの導入ばかりが着目され, サイバネティクスの観点から顧みられることはほとんどない。

    本研究ではサイバネティクスによる都市の構想を検討するため, その先鞭をつけた事例として, 磯崎新アトリエによる〈ポスト・ユニバーシティ・パック〉を取り上げる。磯崎らはサイバネティクスの諸概念を踏まえ, 都市をサイバネティック・マシンとして構想した。サイバネティクスは生物の神経系と機械の機構的同一性を主題とする学際領野である。フィードバックに基づく制御を, 行動と目的に関する科学の基盤とした点がその核心にある。本研究は磯崎らがサイバネティクスをどのように都市に組み入れようとしたかについて, 制御, 通信, 人間―機械系の3項目を軸に検討した。磯崎らの構想はサイバネティクスのメカニズムに力点を置き, 都市の発展過程を描いたものであった。

    また本研究はスマートシティの現況についても, サイバネティクスの諸要素に基づいた考察を行った。磯崎らの構想と同様に, 現代のスマートシティもまた, サイバネティクスの機構を有している。両者は情報技術による都市構想の系譜において, ともにサイバネティクス (的制御) を根底に据えた都市の構想であるといえる。

  • 福沢 愛, 叶 少瑜
    2025 年14 巻2 号 p. 67-82
    発行日: 2025/12/31
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究ではコロナ禍における大学生のSNS利用と精神的健康の関係を究明するため, コロナ禍初期の横断調査 (研究1), 中盤期と終盤期の縦断調査 (研究2) で検討した。研究1では2020年6月に679名の大学生を対象とした調査により, 精神的健康 (幸福感), 情緒不安傾向, 感染対策行動, SNS利用状況を測定した。重回帰分析の結果, 男女ともにInstagram使用時間から幸福感への正の効果が有意であった。そして, SNS利用とそこで得られたソーシャルサポートがいかに精神的健康と結びつくのかについて, 研究2ではソーシャルサポートネットワーク (SSNs) の媒介効果を含めて検討した。2022年 5月と2023年5月に実施した大学生530名のパネルデータを, SNS利用状況やSSNs, 幸福感に関する交差遅れ効果モデルで男女別に分析した結果, 以下のことが示された。男性ではLINE投稿頻度が直接幸福感を高めると共に, 付き合いのある相手一人あたりの親密度を高めていた。女性ではInstagram使用時間がSSNsの人数は減らすものの, 相手との親密度や会う頻度を高めていた。一方で, もともと相手と会う頻度や親密度が高い女性では, InstagramとLINEの使用時間が減少していた。コロナ禍において特に2022年のようなまだ制限の多い時期には, 男性はLINE, 女性はInstagramを利用することで, 規制が緩和された後での対面による親密な対人関係を維持し, 精神的健康を維持していたことが示唆された。

  • 記虎 優子
    2025 年14 巻2 号 p. 83-99
    発行日: 2025/12/31
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー

    本稿では, 記虎 (2021, 2024) などにおいて内部統制システムの構築に際して企業が財務報告を重視していること (すなわち, 企業の財務報告志向) が決算発表の適時性の確保に資することが示されていることを踏まえ, 内部統制システムに係る因果効果として企業の財務報告志向が決算発表の適時性に及ぼす寄与効果に焦点を当てる。そして, 金融商品取引法に基づく内部統制報告制度の導入がこの寄与効果に与えた効果修飾 (effect modification) に着目することで, 準実験 (quasi-experiment) の方法の1つである差の差分析 (Difference-in-Differences: DID) を用いて内部統制規制の導入がこの寄与効果を変化させたのかどうかを検証している。検証の結果, 内部統制報告制度の導入が上記の寄与効果に与えた効果修飾が内部統制システムの構築に際して企業が財務報告を「いつから」重視するようになったのかによって異なることを示した。同制度の導入は, 財務報告を重視する度合いがもともと強かった企業の寄与効果をさらに向上させたわけではなかった。その一方で, 同制度の導入は, 財務報告を重視する度合いがもともとは相対的に弱かった企業の寄与効果を向上させた。このように, 同制度の導入による寄与効果の向上は限定的であり, 同制度の導入は, 後者の企業の寄与効果の底上げはしたものの, 前者の企業の寄与効果の引き上げまではしなかった。

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