本研究の目的は,自己申告尺度によって測られるスマートフォンへの依存傾向が,スマートフォンに関する主観的利用認識と実際の利用ログデータのどちらによって説明されるのかを分析することを通して,それが何を反映した指標であるのかを明らかにすることである。
本研究では,事前に許諾を得たAndroidスマートフォン利用者602名の参加者の5ヶ月間のアプリ起動に関する利用ログデータと主要アプリの利用に関する認識を訊ねたアンケート調査を組み合わせ,自己申告尺度によって測られるスマートフォンへの依存傾向に関して構造方程式モデリング(SEM)適用することで分析を行なった。結果として,利用ログデータから得られた実際の主要なアプリの起動回数はスマートフォンへの依存傾向とほとんど関連しなかった一方で,それらのアプリ利用に関する自己認識は有意に関連していた。ただし,週ごとのスマートフォン利用パターンが恒常的にかなり高い集団は,それが低い集団に比べて有意に依存傾向が高いことも示された。
以上の結果から,自己申告尺度によって測られるスマートフォンへの依存傾向は,基本的には主観的利用認識を反映する変数であり,起動に関する利用ログデータから単純に導かれる過度な利用とは異なる側面を捉えた指標である可能性を提示した。
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