抄録
本稿の目的は,近年注目を集めている討議デモクラシーの議論を社会情報過程として位置づけ,今後の社会情報学を切り開いていく一つの可能性を示すことである。ドイツの社会学者ハーバマスに由来する公共圏的な空間をCMC空間に見いだそうとしてきた議論は必ずしも成功したとはいえないけれども,「討議デモクラシー」として実験的に行われてきたミニ・パブリックスの試みは,公共圏を実現するための成功例といえる。CMC空間を内部に含んだコミュニケーションのネットワークとしての公共圏を,現実的なものとして構想していく可能性は豊かに開かれているということを論じたい。