2022 年 11 巻 1 号 p. 1-16
世界各国の政府機関や大使館がソーシャルネットワーキングサービス(SNS)アカウントを持ち,オンラインのコミュニケーション活動を行っている。ソーシャルメディアの活用は外交の今日的な課題の1つであるが,諸外国による日本社会に向けたオンライン・コミュニケーションの研究は,本質的な議論を進めるに十分な蓄積がされていない。
本研究の目的は,日本が承認する195ヵ国のうち東京に大使館を置く156カ国を対象として,諸外国による日本社会に向けたソーシャルメディア活用の実態を駐日大使館のSNSアカウント運用の比較分析から明らかにすることである。まず156カ国の駐日大使館についてTwitterとFacebookのアカウント開設の有無を調査し,119カ国によるTwitterアカウント89件とFacebookページ99件を特定した。そしてソーシャルメディアの黎明期に始まるそれら駐日大使館のアカウント開設の推移を概観する。さらにTwitterについて,各アカウントの総フォロワー数とツイート数およびツイートに使用する言語の分析を行い,月ごとの平均フォロワー増加数と平均ツイート数の相関,使用言語の観点から散布図に示し比較を行った。
本研究により,駐日大使館を設置する国の4分の3以上がソーシャルメディア上にも存在することが明らかになった。また,日本の人々に向けたコミュニケーションを行うパブリック・ディプロマシーのツールとしてソーシャルメディアを活用する国は限られることがわかった。さらに,欧米主要国と中規模・小規模国でも日本語でツイートする国は比較的戦略的にアカウントを運用していると考えられる。