社会情報学
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研究
産業の情報化と情報の産業化に関する日米中比較分析
―日本の産業連関表と国際産業連関表によるデータ観察―
小野﨑 彩子
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2022 年 11 巻 1 号 p. 17-32

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抄録

本稿では,「産業の情報化」,「情報の産業化」という2つの概念を軸に先行研究の展開を整理した上で,日本の産業連関表と国際産業連関表のデータを観察し,日本,米国,中国の比較分析を行った。

先行研究によると,日本は1990年代まで「産業の情報化」に伴い,「情報の産業化」が進展し,両者が「車の両輪」の関係となって経済発展に影響をもたらしたこと,グローバル化が進んだ2000年代以降,情報通信関連製造業の輸入浸透度の上昇を背景に「産業の情報化」が「情報の産業化」を促進するという関係性が弱まってきていることが明らかにされてきた。データ観察・分析の結果,明らかになったことは次のとおりである。第一に,2010年代以降も情報通信関連製造業の輸入浸透度は上昇していることに加えて,情報サービス業の輸入浸透度は2010年代前半に大幅に上昇している。第二に,国際産業連関表で捉えると,2000年代以降,米国,中国は「産業の情報化」と「情報の産業化」がともに進展し続けている中で,「情報の産業化」が「産業の情報化」より進展しているのに対して,日本は「産業の情報化」と「情報の産業化」がいずれも伸び悩む中で,「情報の産業化」が「産業の情報化」に比べ低位にある。第三に,日本の情報通信関連産業については情報通信関連製造業の供給元が自国から,中国,韓国等に流れているのに対して,米国はグローバルな供給体制を活用しつつ,自国からの投入が最終需要の5割を維持しており,日本とは異なる傾向にある。

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© 2022 一般社団法人 社会情報学会
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