社会情報学
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特集論文
フェイクニュースと立法政策―コンテンツ規制以外の道を模索する―
水谷 瑛嗣郎
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2020 年 8 巻 3 号 p. 47-63

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抄録

フェイクニュース問題は,現代における様々な情報技術の影響を受けており,「思想の自由市場」という概念それ自体の前提を揺さぶっている側面がある。「フェイクニュース(偽情報)」がもたらす危害は,本稿の視点では次の3点が特に問題となる。まず第一にデモクラシーへの影響,特に「選挙」に対する影響である。次に,同じくデモクラシーの影響の中でも,我々の民主政治体制を支える言論空間に対する影響である。そして第三に人権(human rights)に対する影響である。フェイクニュースによりもたらされるこれら「危害」の解消を図るうえで,政府,特に立法府がとり得るオプションとして真っ先に思いつくものに,虚偽情報の発信者に対するコンテンツ(内容)規制やオンライン・プラットフォームに対する規制が考えられる。しかしながらそうした方法はフェイクニュースを解消するよりも,むしろ思想の自由市場に「歪み」をもたらす可能性があることに注意を払わなければならない。本稿では,コンテンツ規制よりも表現空間へのダメージを抑える別の形態の可能性を探る観点から,選挙運動における「選挙運動の沈黙」規制や,既存の報道機関への助成策,そしてプライバシーや個人のデータ保護(例:GDPR)といった手法について検討を行っている。

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© 2020 一般社団法人 社会情報学会
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