抄録
農業用ハウスを用いる施設栽培では外界とハウス内耕地を分離し,外部環境の影響を抑えて内部環境を制御することにより作物に適した環境を管理・調整し,安定した収穫を可能とする.そのような施設栽培でハウス内環境を制御している代表的な機器として,温度を制御する暖房機,日長を制御する照明機と遮光装置,水やりを自動的に行う灌水装置,光合成に必要不可欠な二酸化炭素を放出する二酸化炭素発生装置などがある.農業用ハウスのライフサイクルではそのような機器構成に変更が生じる可能性があり,その際は運用シナリオも再考する必要がある.我々はそのような運用者のシナリオの分析に,制御の観点で対象システムをモデル化して分析するSTAMP/ STPA を適用する研究を行っている.本稿では事例として,二酸化炭素発生装置と天窓,暖房機の組み合わせからなるシステムを対象に,運用者による実践を想定したモデル化と分析を行い,その有効性を確認した.