抄録
近年、ディジタル化という言葉が脚光を浴び、人工知能(AI)のビジネスへの適用例も多くなってきた。その趨勢から、将来、人間はAIに対しいつまでも能力を優位に保つことが出来るのかという不安が広がりつつある。本稿では、人間の作り出す能力の例示として、様々な器楽による音を動スペクトルの解析などによって画像化することで、奏でられる音楽の個々の特徴を明らかにし、人間と人工知能との関係に関連した内容について言及した。また、複雑な現象を単純な法則として明らかにしようとする自然科学の考え方から見た、洋の東西での音楽の特徴についても述べ、西洋音楽とは目指すところが異なる日本の伝統音楽の意味について考察した。低迷する琴三味線音楽が今後普及するための、一つの方向性についての提言も行った。これらの考察を通じた結論として、人間の優れた能力にはAIが超えることのできない部分があることが再認識できたことを述べた。