科学・技術研究
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総論
身近な水辺に生息する酵母はカーボンニュートラルに貢献できるか
浦野 直人 石田 真巳岡井 公彦鈴木 耕太郎武井 俊憲高塩 仁愛
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2021 年 10 巻 2 号 p. 113-121

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抄録

身近な水辺に生息する酵母はカーボンニュートラルに貢献できるか?この突飛な課題について考えてみたい。2021年10~11月に開催されたCOP26では、カーボンニュートラルの実現に向け各国による具体的な取り組みが提案されたが、実現への道程は厳しい。特に日本では2011年の原発事故以来、石炭需要が高まったまま今日に至っている。石炭は大気汚染ガスの排出量が多いため、石炭依存からの脱却が急務である。そこで筆者らは、国土面積が世界第61位・排他的経済水域が第6位である日本の特性を考慮したエネルギー資源として、海洋バイオマス(主に海藻加工廃棄物や雑海藻の有効利用)を提案する。日本人は海藻食民族であるが、加工廃棄物の海への大量投棄や富栄養化に伴う雑海藻の異常増殖と死滅漂着が、沿岸部の更なる汚染と地球温暖化を誘引しており、改善が急務である。筆者らは海洋バイオマスからバイオエタノール生産を行うことで、カーボンニュートラルの一助に成り得ると考えた。しかし海藻は水分含量が多く焼却が困難であり、また高濃度の塩分を含有しているため一般的な微生物処理では著しい活性の低下を伴う。そこで諸問題克服のために、野生酵母による海洋バイオマスの発酵利用を考えた。では海藻バイオマスからエタノール高発酵生産が可能な野生酵母は何処に居るのか?意外にも期待する酵母は身近な水辺環境に生息しており、筆者らはそれらを平易に単離して、有効利用が可能であることを明らかにした。本報では酵母とエタノール発酵とは何か、身近な水棲酵母の単離方法、海藻からのバイオエタノール生産に関して総論する。

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