2022 年 11 巻 2 号 p. 157-161
非対称構造をもつメソゲンジオール(MD62)とトリレン-2,4-ジイソシアナート(TDI)との重付加反応によって液晶ポリウレタン(PU62-TDI)を合成し、その液晶性を調べた。また、比較のため、ジイソシアナートとして、TDIの代わりに、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(13CH)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(13X)および1,6-ジイソシアナトヘキサン(16H)を用いて液晶ポリウレタンを合成した。 PU62-TDIは、昇降温過程でネマチック相を形成した。TDIの代わりに13CHを用いて合成した液晶ポリウレタン(PU62-13CH)も同様にネマチック相を形成した。PU62-TDIとPU62-13CHは、ガラス-ネマチック相転移およびネマチック相-等方相転移温度を示した。一方、13Xあるいは16Hを用いて得られたポリウレタン(PU62-13X、PU62-16H)は、昇温過程でガラス転移温度から融点の間で再結晶化を示し、液晶相の形成が見出されなかった。PU62-TDIについて、温度可変IRスペクトル測定を行い、ウレタン結合間の水素結合の温度依存性と液晶ポリウレタンの相転移との関係を調べた。ウレタン結合間の水素結合の温度依存性は、液晶ポリウレタンの相転移に連動した挙動を示した。また、等方相温度域でもウレタン結合間の水素結合は存在しており、液晶ポリウレタンの運動性に水素結合が強く影響することが明らかになった。