科学・技術研究
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技術報告
ZrO2原料中に含まれるPがイットリア安定化ジルコニアのイオン伝導性および 耐熱衝撃性に与える影響
中山 享
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2022 年 11 巻 2 号 p. 163-166

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抄録

高純度ZrO2とNH4H2PO4を用いてZrO2 – 0 ppm-P、140 ppm-Pおよび600 ppm-Pの出発原料を調製した。安定化剤にY2O3を用いて(ZrO2)0.95(Y2O3)0.05セラミックスを、焼結温度1400~1600 ℃にて作製した。結晶相は、正方晶系と立方晶系で構成されていた。1500 ℃以上にて焼結したセラミックスの伝導率には大きな差がみられなかった。1400 ℃にて焼結したセラミックスでは、ZrO2 – 0 ppm-P 、ZrO2 – 140 ppm-P、ZrO2 – 600 ppm-Pの順に伝導率が高くなった。1450 ℃にて焼結したセラミックスでは、ZrO2 – 600 ppm-PがZrO2 – 0 ppm-P およびZrO2 – 140 ppm-Pに較べて高い伝導率を示した。1450 ℃にて焼結したセラミックスのナイキストプロットは、ZrO2 – 0 ppm-P 、ZrO2 – 140 ppm-P、ZrO2 – 600 ppm-Pの順に、粒界抵抗成分に起因する円弧が小さくなった。ZrO2原料中のP含有量が多くなるに従いセラミックスは焼結し易く、気孔が減ったと考えられる。耐熱衝撃性試験では、1450 ℃以上にて焼結したセラミックスはすべてで亀裂が確認された。1400 ℃にて焼結したセラミックスでは、ZrO2 – 0 ppm-PおよびZrO2 – 140 ppm-Pは耐熱衝撃性が高く、ほぼ同等であった。したがって、ZrO2 – 140 ppm-Pを出発原料にして焼結温度1400 ℃にて作製したセラミックスが、イオン伝導性および耐熱衝撃性共に優れていた。

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