抄録
本研究では、東北地方4市(米沢市、郡山市、いわき市、会津若松市)の産業集積構造について、各業種の製造品出荷額と工業製造品出荷額総計の関係から統計的に検討した。工業統計は、経済産業省のホームページから入手し、統計解析はエクセルにより行った。各業種の製造品出荷額と工業製造品出荷額総計の回帰直線の相関係数と回帰係数から以下のことが明らかとなった。東北地方4市(郡山市は2000年以前、会津若松市は2006年以前)の工業製造品出荷額総計と各業種の製造品出荷額の相関係数が0.9を超える業種は、電子情報通信業であった。そして、相関係数が0.9を超える工業製造品出荷額総計と情報通信・電気機械・器具の出荷額の回帰係数は、工業製造品出荷額総計に占める割合を表すことが明らかとなった。また、米沢市と2006年以前の会津若松市の情報通信・電気機械・器具の出荷額の工業製造品出荷額総計に占める割合は、郡山市やいわき市の30 %程度に比べ50 %以上と高く、米沢市は70 %と極めて高かった。一方、相関係数が0.8未満の場合、回帰係数は、工業製造品出荷額総計に占める割合を必ずしも表していないが、産業集積構造においては、工業製造品出荷額総計のトレンドに影響されにくい業種である。以上の結果は、工業製造品出荷額を指標として、地域の産業集積構造の再構築を検討する上で、重要な示唆を与えるものと考えられた。