科学・技術研究
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新たな「アンケート調査結果の可視化ツール」を用いた教育研修におけるアンケート調査の実施方法と分析方法に関する研究
渡部 敏美野田 博行小野 浩幸高澤 由美
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 14 巻 1 号 p. 75-81

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抄録
本研究の目的は、教育研修におけるアンケート調査の実施手法および分析方法を検討することである。研究は、地域金融機関の職員を対象とした研修において、アンケート調査により実施した。本研究の特徴は以下の3点である。第一に、アンケート調査項目の設計において、受講前に実施する設問、受講後に実施する設問、並びに受講前後で同一内容による比較を可能とする設問を設定した点である。第二に、受講前後の回答の変化を可視化し、タイプ分けをするため、独自の分析ツールであるB&Aマトリクス(Before & After Matrix)を開発・適用した点である。第三に、アンケート調査およびB&Aマトリクスを通じて得られたデータを基に受講者の属性との相関分析を行い、意識と属性要因との関係性を検討した点である。その結果、受講前後の比較を行った3項目において、回答の変化が視覚的に確認された。そのうち1項目については、分散と中央値の検定により統計的に有意な差が認められた。また、アンケート調査結果と受講者属性との相関分析では、研修で使用したツールの理解度に関する設問において、勤続年数と理解度との間に負の相関(若年層の方が理解度が高い)を示す傾向が確認された。以上のことから、B&Aマトリクスを用いた受講前後の比較分析は、受講者の個別の変容を可視化し、タイプ分けをする上で有効な手法であることが示唆された。更に今後の教育研修の継続的改善に向けては、受講前後の変化量の定量的評価方法や、アンケート調査結果と受講者属性との関連性をより精緻に分析する手法の導入が求められる。
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