科学・技術研究
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原著
京金網の物性
針金断面の硬さ試験
辻 賢一高井 由佳後藤 彰彦濱田 泰以
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2013 年 2 巻 1 号 p. 65-68

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抄録
京都で作製される金網は京金網と呼ばれ、京都の文化や産業を支える道具や建築物に使用されてきた。しかし現在、京金網の工房は京都市内に5軒のみとなっており、京金網製作の技術のコツやカンの解明し後世に伝えることが急務となっている。これまで筆者らは亀甲網の製作における熟練者と非熟練者の手指の動きの解析を行ってきた。この結果、亀甲金網を製作する際の針金を「ねじる」動作中の示指の遠位指節間関節の移動速度変化が、熟練者と非熟練者とでは異なることが明らかとなっている。熟練者においてはねじり作業開始から増加→減少→増加と変化していたのに対し、非熟練者は何度も増減を繰り返していた。手指の移動速度の変化が何度も起きている場合、針金に何度も負荷が加えられている可能性が高く、加工硬化への影響が大きくなると考えられる。そこで本研究では、熟練者と非熟練者が製作した亀甲金網の「ねじれ部」の針金断面の硬さ試験を行い、金網作製の経験年数が針金の加工硬化におよぼす影響を明らかにした。熟練者および非熟練者に亀甲金網の作製を指示した。亀甲は2本の針金を2回ねじることで作製される。このため、1回目のねじれ部、2回目のねじれ部、1回目と2回目のねじれ部の境界にて針金を切り出し試料とした。また、比較試料として未使用の針金を準備した。これらの試料に対して、ビッカース硬さ試験をおこなった。この結果、未使用の針金と比較し、熟練者、非熟練者とも加工硬化が生じていた。非熟練者の針金断面の硬度は熟練者よりも高く、熟練者は必要最低限の力を針金に加えながら金網を編んでいることが示唆された。
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