抄録
再生医工学は皮膚等の組織の再生に関してはある一定の成果を挙げてきているが、肝臓に代表される代謝系臓器の再生に関しては未だ基礎研究の域を脱し得ていない。これは、組織内部の細胞にまで十分な酸素・栄養素を供給するために不可欠な血管網を組織内部に配置する手法が未だ開発段階にあるためである。口径の大きな血管(数ミリ以上)を人工的に作製する手法はこれまでに多く報告されているが、生体組織内部において緻密な血管網を作製するのに適した微細なサイズの血管を作製する手法は少ない。本研究では、中空構造を有する微細なアルギン酸カルシウム/ゼラチンゲルファイバーを用いた血管様構造体作製法の開発を目的とした。具体的にゲルファイバーは、液-液coflowing stream法を応用して作製した。その際、種々の操作因子を変化させることで、ファイバーの外径および中空径を制御可能であった。また、酸化アルギン酸でゼラチンを架橋することで、ゲルファイバーからのゼラチンの溶出を抑え、ファイバーに細胞接着性を付与できた。そのファイバーの中空部に血管内皮細胞を、ゲル部分に血管平滑筋細胞を包括することで、生体の微細な血管を模倣した血管様構造体を作製した。