抄録
自動車は、燃費と環境性能に関係する排ガス特性の向上を達成し、その優れた技術的進歩によって文明社会に大きく貢献してきた。しかしながら、それらの貢献があったとしても、社会に対し、自動車は何をしてもよいとはいえない。本稿では、現在、自動車業界やそのユーザーが患っている世界的症状と思われる、3つの問題点をとりあげた。一つは、技術的性能の向上と相反して台頭してきた自動車メーカーの傲慢さの問題である。二点目は、現在のユーザーには、例え安全と環境性能が高まった車を使っているとしても、以前「歩行者から見て、車は迷惑なもの」といわれていたことを忘れ去ったような、驕慢さが見える点である。そして三点目は、一般ユーザーの科学的知見の欠如をよいことにして、交通施策や環境施策を間違った方向に導きつつある行政に関わる問題点についても述べた。