抄録
地球温暖化の主な要因の1つとなっている大気中のCO2濃度の上昇に対して大気・海洋間CO2輸送を正確に評価することは重要である。大気・海洋間CO2収支を求める際に用いられるCO2輸送速度は一般に風速の関数で表されている。しかし、全球規模の風速データとしては、再解析データや人工衛星データなど空間解像度の異なった様々なデータが多く提供されている。したがって使用する風速データの相違によって大気・海洋間CO2収支にどのような相違が生じるか影響を検討する必要がある。本研究では、大気・海洋間CO2収支を全球規模で推定し、比較を行うことで、どのような影響があるか検討を行った。使用した風速データは、NCEP-R1(National Center for Environmental Prediction-Reanalysis)、NCEP-R2、NCEP-CFSR(Climate Forecast System Reanalysis)、ECMWF-ERA40(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts- ECMWF Reanalysis 40-years)、JRA-55(Japanese 55-years Reanalysis project)の再解析データ、そしてCCMP(Cross-Calibrated Multi-Platform)の複数人工衛星データである。時間解像度は全て6時間毎である。データ使用期間は2001年の一年間とした。全球規模での大気・海洋間CO2収支の年平均を算出した。その結果、NCEP-R1、NCEP-R2、NNCEP-CFSR、ECMWF、JRA-55/、CCMPは、それぞれ-3.48、-4.27、-2.76、-2.23、-2.72、-2.69 (PgC/year)であり、最大で約2 PgC/yearと2倍以上の差があった。また緯度毎に比較した結果、各風速データセットの相違は、低緯度で小さく、中・高緯度で大きな差を示した。