抄録
大気・海洋間CO2収支を求める際に用いられるCO2輸送速度は、既往研究においては海面高度10 mの風速U10のみの関数で表されていることが多いが、風波、砕波、およびうねりなどの考慮を十分考慮したモデルは未だに確立されていない。近年、鈴木・増田(2014)によってMonahan and Spillane (1984)の砕波の入れ方をより精密にした計算手法が提案された。この計算手法には砕波のパラメータとして白波の面積比(Zhao and Toba,2001)が用いられている。しかしCO2収支を正確に見積もるには、全球の高風速域での白波の面積比の影響、また白波の面積比に用いられている抵抗係数モデル・風速データ・風波周期データの相違について検討する必要がある。そこで本研究では、ECMWF波浪予報モデルによる風速・風波周期データを用いて大気・海洋間CO2収支を積算し、全球規模での大気・海洋間CO2収支に及ぼす白波の面積比の影響を検討した。その結果、抵抗係数モデル・風速データ・風波周期データの相違は全球規模での大気・海洋間CO2収支に及ぼす影響が無視できるほど小さいことが示された。また、風速20 m/s以上の高風速帯における大気・海洋間CO2収支が全球規模において無視できるほど少ないことを示した。さらに、全球において最も占める割合が大きい6~7 m/sの風速帯における白波の面積比が大気・海洋間CO2収支に大きな影響を及ぼすことが示された。