抄録
貝類非可食部由来のセレンの有効利用の可能性を明らかにするため、数種の二枚貝および巻貝の非可食部のひとつとして中腸腺および全筋肉におけるそれぞれのセレン分布を明らかにし、それらの水銀分布と関連づけて検討した。その結果、本研究に供したすべての魚類における中腸腺の両レベルは当該の全筋肉のそれらより有意に高く、低酸化状態のセレン化学種が両組織に優位に存在した。また、水産物の安全指針としての水銀に対するセレンのモル比は該当する全筋肉のそれと比較してほとんど同じか幾分高く、中腸腺は一般に摂食されないが、きわめて安全な組織であることが示唆された。しかしながら、水銀のような重金属は全筋肉と比較して中腸腺により高く蓄積する傾向を示しており、結果として、本研究では生物学的に有効なSe(VI) 化学種のモル分率の減少が中腸腺に観察された。これらの知見から、セレンの有効利用は既報の数種魚類の場合と異なり、貝類中腸腺からは期待されないことが示唆された。