科学・技術研究
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総論
東京近郊水圏由来の芳香族炭化水素を資化分解する細菌のライブラリ作製
浦野 直人 遠藤 琳太郎石田 真巳岡井 公彦高塩 仁愛
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2020 年 9 巻 1 号 p. 9-16

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抄録
日本では昭和30~40年代-高度経済成長期に著しい環境破壊が発生した。東京近郊の水辺(河川・湖沼・運河・海沿岸など)は流出ゴミや油・洗剤の泡等により悪臭を放ち、魚介類が生息しない腐敗水の巨大な溜まり場と化した。その時代から数十年の歳月を経て都市の水質は改善し、かつて水底に堆積したヘドロは現在も残存しているが、ヘドロ中の有害化学物質濃度は多くの水辺で減衰している。これは非常に長い時間を経て化学物質が自然分解され、更に微生物により資化分解されたことに基因する。筆者らは東京近郊のかつての汚染水圏を探索して、自然繁殖している芳香族炭化水素(AHs)を資化分解する微生物を単離・解析してライブラリを作製した。本ライブラリにはAHsの中で一員環(ベンゼン)、三員環(フェナントレン)、四員環(ピレン、クリセン、ベンゾ[a]アントラセン)、五員環(ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a, h]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン)、六員環(ベンゾ[g, h, i]ペリレン)などの資化分解細菌を保管した。これらの菌株は種多様性に富み、かつ同一菌株がAHs複数種の資化分解能を保持していた。特にヒトに強い発癌性が報告されているベンゾ[a]ピレンの分解能が高い新奇細菌種を単離した。本ライブラリを利活用することで、生態系を撹乱しないバイオレメディエーションへの応用が期待される。
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