現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
「リスクの分配」の分析視座の導出
ドイツ社会的不平等研究における個人化研究と階級研究の対立の統合
川端 健嗣
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 10 巻 p. 52-63

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抄録
「リスクの分配」は社会的不平等研究の新たなパラダイムである。「リスクの分配」の多寡はいかにして分析可能か。これまで「リスクの分配」分析をめぐって階級研究と個人化研究の対立があった。本稿は「リスクアビリティ(riskability)」という概念の提示を通じて対立を統合する視座を提示する。
リスク分配の分析は次の理由で困難である。「リスク」が「富」のような現存する人々の欲求の対象ではなく、未来の損害に関わる回避の対象であることに拠る。未来の損害の対象把握は科学的な知識や統計的確率や人々の予期に左右される。それゆえBeckは「リスクに存在論はない」と論じ、富の分配においては「存在が意識を規定する」がリスクの分配にあっては「意識が存在を規定する」と主張した。
しかしBeckの社会的不平等研究への問題提起は個人化論と共に意識決定論や社会的不平等の「脱構造化」論として捉えられ、発展的に引き継がれていない。またBeckは「今日に社会の不平等をどのように捉えることができるのかという独自のモデル」の提示に至っていないと批判された。
一方Eugene Rosaが指摘した通りNiklas Luhmannの「決定者/被影響者」のモデルはリスクと社会的不平等の関係性を問い進める重要な視座を提示している。しかし「決定者/被影響者」という択一的区別はリスクをめぐる人間関係のより細かい記述の余地を残している。
本稿はこの余地を展開し「リスクアビリティ」の概念を提示する。「リスクアビリティ」は「危険」(運命的損害)を「リスク」(選択的損害)に変換する能力を指す。「リスクアビリティ」を通じて「意識が存在を規定する」ことの意味は、意識の変数が経済よりもより強く作用するという強弱関係ではなく、意識の変数が経済の変数に時間的に先行する順序関係であることが明らかになる。
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© 2016 日本社会学理論学会
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